居場所をつくろう 共生の現場から

第1部 ホームレス(中) 求められる多様な支援

2017年1月4日

若者の自立につなげる

働く意欲を継続してもらうため実施している地域の清掃=昨年12月28日、大阪市北区

 日雇い労働者が集まる釜ケ崎地区があり、全国最多のホームレス生活者がいるとされる大阪。特別措置法の下、野宿生活者はピーク時から15年で4分の1程度に減った。行政が支援団体などとともに講じてきた対策が一定の成果を上げた形だ。しかし、ホームレスの現状は多様化しており、より効果的で現実に即した支援の在り方が課題になっている。

■アウトリーチ□

 ホームレス自立支援法が施行された翌年の2003年。厚生労働省が実施した初の全国調査では、ホームレスに該当する人は全国で2万5296人で、うち大阪市は6603人。この年をピークに減り続け、昨年1月の調査では全国で6235人、大阪市は1497人で、それぞれ15年で4分の1程度に減った。大阪府全域でも1611人で、15年前の2割程度になった。

 この間、市は路上での巡回相談や自立支援センターで対応に当たってきた。路上で支援者側が声掛けする「アウトリーチ」の手法で就労や健康の相談を受け、就労による自立を促す自立支援センターへの誘導や帰郷の仲介などを行ってきた。

 一定の効果が見られる一方、これまでのやり方では支援が行き届かない人たちも存在する。「行政の世話にはなりたくない」と支援を拒む高齢層と、商業施設などを暮らしの拠点にする「ネットカフェ難民」と呼ばれる20〜40代を中心とした“ホームレス歴”の浅い人たちだ。

 ただ、市福祉局の担当者は「高齢や病気で働けなくなると結果的に支援を求めてくる。支援を拒否されても、粘り強く見守りを続けていかなければ」と話す。

■仮住まい提供□

 行政とも連携しながら、支援を続ける民間団体がある。主に若者を対象に仮住まいを提供しながら求職活動や生活相談など個別の支援をしている「大阪希望館」(大阪市北区)もその一つだ。

 設立は09年。20〜40代が主な対象で、アパートの一角に7室を常備する。これまで7年半で計172人が仮住まいを利用、約8割が仕事を得て自立を果たした。居室は無料。入居者はまず就労までの準備訓練として週3回、周辺の清掃作業に従事し、1日4500円の手当を生活費や求職費用に役立てる。

 社会保険労務士で事務局長の沖野充彦さん(55)は、かつて釜ケ崎地区で野宿生活を送る人たちの支援に関わってきた。その中で、「非定住型」の不安定就労者から相談を受けたのが希望館立ち上げにつながった。

 学歴が高校卒業に満たなかったり、精神疾患があったりと課題さまざまある。一方で、個室を備える希望館では集団になじめない若者をはじめ、行政の支援では対応し切れない人たちを受け入れる。沖野さんは「サポートさえあれば仕事に就ける若者への支援策が生活保護で良いのか」と問題提起し、「課題に応じた支援が必要だ」と話す。

 有効求人倍率が1倍を超え、景気回復の兆しも指摘されるが、非正規労働者の増加が大きな課題だ。沖野さんは「賃金が安く、細切れの状況は10年前と変わっていない。雇用保険にすら加入できないケースもあり、次の仕事を探す間の家賃を払えず、部屋を出ざるをえない」と強調。「仕事があれば良いというわけではない」と警鐘を鳴らしている。

ミニクリップ
 ネットカフェ難民 ネットカフェなど商業施設で夜を過ごす不安定な雇用状態にある人を指す言葉。2007年の新語・流行語大賞でもランキングされた。同年の厚労省調査でネットカフェ難民は5400人。日雇い派遣などの短期就労は賃金が安く、雇用も不安定で、家賃を払うことさえできないという背景がある。労働法制の規制緩和により、ほとんどの業種で派遣ができるようになったために生まれた、という指摘がある。