浅野秀弥の未来創案

【アンケート調査の波紋】

2017年1月5日

不可解な教科書選定

 大阪市教委が一昨夏実施した中学校教科書選定の経過を巡って昨夏、国会で質問主意書が提出された。選定採択前、市教委主催の教科書展示会での一般アンケートに、制作のH社に依頼された岸和田市の不動産会社F社から大量動員が行われ、「不正なアンケート結果が、採択に大きな影響を与えたという風評が広がっている」という内容だ。教科書選定は4年に一度。一昨年の大阪市の場合、アンケート評価で最も支持された社会科歴史教科書としてH社製が採択された。

 市教委は当然「アンケートは採択とは直接的に関係ない」としているが、アンケートの内容が特定社の教科書採択に影響を与えようという意思を持って多くの回答がわざとなされていたとすれば関係は明確だ。実際、「大阪市の教科書採択は、アンケートが決め手となる」という事前情報が流れた。昨年3月には、大阪市議会で「アンケートと採択との因果関係の疑義を調査するよう求める陳情書」が採択され、外部第三者による調査まで行われた。アンケートは市内32カ所の教科書展示場で実施され、市民対象に広く行われたが「採択には直接影響しない」というのが建前だった。

 既得権益の打破、身を切る改革をうたうのが維新政治の原点のはず。現状の大阪市政は、結果として大きな権益を単に以前の為政者から維新支持層に付け替えたに過ぎない。その一例として改めて警鐘を鳴らしておく。

 昨年の市教委による選定には他にも疑義がある。選定者について。H社の関連企業関係者が教育委員として加わっていた。「李下(りか)に冠を正さず」の言葉もある。H社の教科書選定に当たっては、協議から外れるなどの対応が必要だったと思う。

 真実は闇の中だ。しかし、子どもたちの未来を担う教育の基本は教科書採択からはじまる。大人のご都合で公平な採択がゆがめられてはならない。橋下前市長が選んだ教育長をはじめとする教育委員は彼のシンパが多く、平松市長時代の委員が去って久しい。安倍政権の各種委員人事をみても分かるように、公的委員は実際には行政トップの思想的シンパで占められる。実に残念なことである。

 あさの・ひでや(フリーマーケット=FM=社社長、関西学生発イノベーション創出協議会=KSIA=理事長)1954年大阪市生まれ。わが国のFM創始者で日本FM協会理事長。関西経済同友会幹事。数々の博覧会等イベントプロデュースを手掛ける。