連載・特集

澪標 ―みおつくし―

「いい家」とはどんな家?

釜中  明
NPO後悔しない家造り  ネットワーク「いい家塾」塾長
2012年3月9日

 「いい家とはどんな家ですか」と、よく質問します。

 皆さんならどのように答えますか? 明快に答える方が少ないのです。実は、曖昧(あいまい)なイメージで家を買うと、こんなはずではなかったと後悔するのです。

 当塾のいい家の定義は「住み心地のいい家」です。ちょっと抽象的なので、住み心地のいい家とは「夏涼しく冬暖かい健康住宅」と分かりやすく定義しています。

 この理想はどうすれば可能になるのでしょうか。(1)構造(2)工法(3)素材(4)断熱−をどうするか。(5)誰に頼むか? これが、家造りの五つの重要ポイントなので講座のテーマとして授業しています。

 正解は、木構造の在来軸組工法で、自然素材を使い、セルローズファイバーZ工法で断熱施工をすることです。無暖房無冷房の家も実現しました。最後のハードルは、優秀な建築士と施工者に巡り合えば「いい家」造りが可能になります。

 木の家は、なぜ優れているのでしょうか。木は呼吸をしているので、調湿性があり断熱性に優れていて温度調節もするので日本の高温多湿、低温乾燥の気候風土にマッチしています。何より長持ちしますし、私たちと同じ生物なので相性がいいのです。

「住み心地がいい」の正体

 「心地いい」とは、一体どのように解釈すればよいのでしょうか。心地よさはどこから来て、人はどこで感じるのでしょうか。

 由来は自然界の癒やしの効果であり、癒やしを感じるのは人体の五感識です。自然界などでみられる、ゆったりとした流れを「f分の1のゆらぎ」といいます。

 私たちは、炎のゆらめき、小川のせせらぎ、風のそよぎ、小鳥のさえずり、木漏れ日、蛍の光、寄せてはかえす波などで心が癒やされます。心臓の鼓動と同じリズムといわれるこのゆらぎが、脳波をα波にし、緊張を解き心地よさにつながるのです。

人間の五感識

 般若心経に「眼鼻耳舌身」と記されています。これを五感識、五官能、五欲といいます。人はこの五つの機能で心地よさを求め、感受しているのです。家における五感識を順に見ていきましょう。

 いい家塾の構造&完成見学会に参加された方は、玄関に一歩入った瞬間、「わア〜木のいい香り」と言われます。これは森林浴で心が和むのと似た感覚です。正体は樹木から放出されるフィトンチッドで、嗅覚を満足させます。畳のイグサの爽やかな香りも同じく「鼻」からの官能です。石油由来の化学物質は刺激臭がありシックハウスの元凶ですから使用しないでください。

 木造の骨太の柱や梁(はり)からは、力強さと揺るぎない安心感と温かさを覚えます。無垢(むく)の木を見て、板目の曲線のゆらぎや節の造形が、感性を揺さぶります。これらは「眼」からの官能です。

 家のクレームで一番多いのは「音」です。この問題は、結露を防ぎ遮音吸音効果もある、原料が新聞紙のセルローズファイバーで断熱施工をすれば解決できます。木は音の乱反射を防ぎ音楽を楽しめる「耳」からの官能です。

 ダイニングは家族が楽しい食事をする団欒(だんらん)の場で、「舌」で味覚を愉(たの)しみます。舌の官能は生きる本能を満足させてくれます。

 5番目の官能は「身」です。板の間を素足で歩く心地よい感触は誰も否定しないでしょう。縁側に寝そべり、小春日和の淡い陽光を浴びて心和らいだ至福のひとときもあるでしょう。

住まいは第3の皮膚

 建築家デヴィッド・ピアソンは「住まいは有機的組織体に匹敵する私たちの皮膚のように、不可欠な機能(保護、保温、呼吸、吸収、蒸発、調節、伝達)を遂行する『第3の皮膚』である」(衣服は第2の皮膚)と述べています。残念ながら、今の家の多くは石油化学製品でできており機能を果たせないので不適格です。

 住まいは「生命と財産を護(まも)る器」であり、さらに住み心地の良さ、すなわち「五感の満足」が求められるのは当然であります。私はこの奥深い「住み心地のいい家」造りにさらなる使命感をもってチャレンジしています。

 第15期生の受講申し込みや質問、お問い合わせは電話06(6773)3423。またはメールinfo@e−iejuku.jpで。

 (かまなか・あきら 大阪市天王寺区)



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