澪標 ―みおつくし―

愛と幸せを受け継いでいくガレット・デ・ロワ

もり ともえ
パティシエ・お菓子教室Rouge―Berry主宰
2017年1月16日

 パイ生地を薄くのばし、バターとアーモンドたっぷりのクリームを入れて作られるそのお菓子には、王様のお菓子という意味があり、ソラマメ大のフェーブと呼ばれる陶器の人形が入っています。生地の表面には奇麗な模様を描き、焼き上げ、最後に紙製の王冠が添えられます。

 フランスでは、1月6日の公現祭に食べられます。切り分けた中にフェーブが入っていた人が1年間幸せに過ごせるということで、お菓子に添えられた王冠が頭に掲げられます。

 私がこのお菓子を初めて作った時、子どもたちの笑顔が見たくてフェーブをこっそり二つ入れたり、王冠を子どもたちと折り紙で作ったりして、楽しんでいました。

 以来、このお菓子は家族や仲間と新年を祝うために特別で、大切なお菓子となりました。祖父母から父母へ、そして、私たち姉妹へ。愛情のバトンがつながっているからこそ、私は子どもたちを愛し、子どもたちに愛されているのだと思います。

 私が育った家は、とにかく人の集まる家でした。近所の人、友人、親戚など、いつも誰かが来ている環境でした。母は家に突然来るお客さんに料理を作り、お酒や飲み物を買いに行き、おもてなしの原点をいつも目の当たりにしていました。私は母の作ったお料理を盛り付けることが大好きで、テーブルに持っていくと、お客さんが褒めてくれるのを喜んでいました。

 お客さんが帰ったあと、両親は「みんなが来てくれることが本当にありがたいことだ」とよく話していました。そんな両親に育てられた私は、お菓子を教えるというお仕事をして、おもてなしの大切さを実感しています。今も飾ることが大好きで、歓声があがるくらい喜んでくれるデコレーションをしています。

 また、私はとてもおせっかいで泣き虫でした。友達の話を聞くと、一緒に泣いたりしていました。大人になっても、お仕事で受け持っている研修生を送り出す時や、卒業される生徒さまを送り出す時は、毎回泣いてしまいます。

 皆さんは私が涙目になっているのを見て、たくさんのありがとうを言ってくれて、もらい泣きをしてしまいます。寂しいから泣いているのに送り出せる喜びをかみ締めて、幸せな気持ちになります。「先生がいてくれたから、ケーキ作りが楽しくて好きになったよ」「先生に教えてもらって失敗なく作れるようになったよ」。そういう声を聞く時が、一番幸せです。

 私がたくさんの方に愛を届けられるのは、たくさんの方にあげてもなくならないくらいのあふれる愛をくれた両親や祖父母のおかげです。だから今年の王冠は、祖父母と両親に用意して、心からのありがとうを伝えたいと思います。

 フランスでは1カ月で人口と同じくらいのフェーブが作られるそうです。そして、そのたくさんのフェーブの向こう側に幸せの王冠が無数にあること、そんな温かさが世界中に広がって争いのなくなる日が来ることを切に願います。そして私はこれからもずっと、おばあちゃんになるまで、皆さんを幸せにするお菓子を作り続けていきたいと思います。愛と優しさにこだわって…。

 ◆ガレット・デ・ロワ簡単レシピ

 ボウルにバター、アーモンドプードル、溶き卵、砂糖を各35グラムずつ入れてよく混ぜる。冷凍パイシートをのばし16センチの円形を2枚抜く。1枚にボウルの中身を周り1センチあけて塗り、もう1枚でふたをして溶き卵を塗り竹串で好きな模様を書く(フェーブの代わりに栗やナッツを1粒など当たりがわかるようにすると楽しめます)。真ん中に空気穴を開け210℃で30分焼く。

 (大阪府富田林市)