澪標 ―みおつくし―

大阪を学ぶ・大阪から学ぶ

呉 光現
特定非営利活動法人聖公会生野センター総主事
2017年1月23日

 今回で私のコラムも最後になりました。これまでありがとうございました。

 新暦中心の日本ですが、実は「漢字文化圏」では、今でも旧暦が大切です。1年の始まりは旧正月です。中国では春節、韓国ではソルナル、ベトナムではテトなどと言って大きな祝日です。年配の方は「ああ、そうか」と思うかもしれません。両親の故郷の韓国ではこの日、親戚が集まって先祖に祭祀(さいし)を行います。私も幼いときは、旧正月は朝に祭祀をして学校は2時間目から行くのが当たり前でした。懐かしい思い出です。

 今年の旧正月は1月28日です。日本では実感はありませんが韓国ではそうではありません。3日間お休みになります。その頃に韓国に旅行に行った人は多くの店が休んでいるので戸惑ったと聞いたりします。

 さて、聖公会生野センターでは毎年冬と夏に韓国の大学生10人を1カ月受け入れています。もっぱら経営学関係の学生です。そのものずばり「日本インターン研修」です。今年も1月11日から1カ月間行っています。冬研修には旧正月があるので大丈夫かな? と思ったりしますが、若い人にはあまり影響はないようです。

 「大阪を学ぶ・大阪から学ぶ」というコンセプトで研修を組むのですが、大学側と調整しながら「大阪らしい」学びを目指しています。大阪らしいとはなんでしょうか? 大阪の特徴は何と言っても「ものつくり」「多文化・多様性」「包容さ」だと思っています。20世紀初頭、大工業都市の大阪には多くの地域から人々が働きにやってきました。沖縄や朝鮮がその最たる地域だったでしょう。

 「異文化」と接することは「新しい発見・出会い」と共に「摩擦・ストレス」も生みます。そういった経験を繰り返しながら現在のダイバシティ(多様性)の大阪が形成されてきたのではないでしょうか? 現在多くの外国人が大阪にやってきます。道頓堀に行くと観光客のためのドラッグストアが軒を連ねています。しかし、それは違和感のある光景のような気がします。中国語・ハングル・英語があると確かに旅行者には便利でしょう。韓国の繁華街でも同じような感じになっています。「商売」としてはいいかもしれませんが、本来その「繁華街」「文化ゾーン」が持っていた固有のおもしろさが平たんなものになるのではないかと心配です。

 そして日本に「居住」している外国人はアジアからだけでも200万人近くになりました。中国・韓国が圧倒的な数を占めています。私のような2代3代と住んできた者だけでなく最近やってきた「第1世代」が「住民」として地域社会に住むようになりました。現実にあちらこちらで摩擦が起こっていますが、一方で彼ら、彼女らを住民として生活サポートや交流を深めようとする取り組みもあり、その地域では外国人住民も生き生きと暮らす姿を垣間見ることができます。

 「向こう三軒両隣」という言葉がありますが、地域コミュニティーが弱体化していく中で海を越えてやってきた住民と一緒に路地裏のおつきあいが案外コミュニティーに力を与えるのではないでしょうか? そのためにも100年前の私たちの大阪の先輩たちの「長所」を共有できないでしょうか?

 1カ月間、日本を学ぶ韓国人学生がそんな「大阪を学び・大阪から学んで」ほしいと思っています。大切な架け橋になることを願いつつ…。

 (オ・クヮンヒョン、大阪市天王寺区)