澪標 ―みおつくし―

一人では確立できなかった アイデンティティー

金 和子
在日コリアン青年連合(KEY)事務局スタッフ
2017年2月20日

 はじめまして。私は堺出身の在日コリアン3世で、在日コリアン青年連合(KEY)のスタッフをしています。KEYとは、朝鮮半島にルーツのある10代〜30代の青年で構成する非政府組織(NGO)で、民族的アイデンティティーの育成と、東アジアの平和と人権を確立するための社会意識を育む教育活動を行う団体です。青年期において、アイデンティティーを育むための仲間やコミュニティーとの出会いはとても大切なものです。私自身も18歳までそういった出会いがなく、自分は何者だろうかと悶々(もんもん)としてきました。

 私は物心ついたころから両親に、「あんたは韓国人や。恥ずかしいことやないよ」と教えられてきました。しかし韓国語が話せるわけでもない自分は韓国人と言えるのか? 他方、学校では、まるで日本人しかいないように進行される「わが国は」で始まる社会の授業、「I am a Japanese」で始まる英語の授業。私の居場所ってどこ? 心の奥で叫んでいました。

 とくに疑問に思ったのは「人権」の授業。在日に対する差別はやめようという啓発のビデオ。私は日本名を使っていたので先生から名指しされることも無かったですが、みんなと同一に感想文を求められるのも当惑しました。私は素直に書いてみました。「先生、みんなは差別はいけないと思いましたと書けばいいのでしょうが、私は一体、何と書けばいいんですか?」。返答は無く、子ども心に「人権」てそんな軽いのん?と思いました。

 高校の人権の授業は、リバティおおさかの学芸員の方が講演に来られました。被差別部落の女性で、個人史とともに、自分は部落問題では被差別側だけれど、日本国籍を持った健常者であり、差別する側でありうる。差別とは誰もが関係のある問題ですと話してくれたのがスッと心に入りました。

 大学1回生の夏には、新聞記事で見つけた日本・在日・韓国3者の共同イベントに参加しました。日本名で参加を申し込みましたが、この5日間だけ本名を使ってみないかと勧められ、初めて「ファジャ」と呼ばれました。初対面でもファーストネームで呼び合うあったかい空間。名前とは、呼ばれることで愛着を持つものなんだ、「名乗る」より先に「呼ばれる」があるんだ! と体で感じたのはコペルニクス的転回でした。

 愛着を持ち始めたこの名前とどう付き合っていくか。私は自分を確立するための言葉を求めていました。そこでKEYの存在も知り、さまざまな先輩たちから生き方を学びました。

 在日コリアンというアイデンティティーは、自分がどう生きるかという個人的な問題である一方で、共同体意識、社会意識でもあるので、一人で確立することは難しいと思います。悩んでいるありのままの自分をあたたかく包んでもらう経験と、魅力的に生きている先輩たちとの出会い、そこからコミュニティーへの愛着と自己肯定が確立されていく。ヘイトスピーチが深刻化する昨今、私たちのような自助グループの社会的必要性はますます高まっているのではないかと感じています。

 (キム・ファジャ、大阪市此花区)