なにわに生きる 次代につなぐ

 2019年が明けた。平成と新元号をつなぐ節目の年となる。新しい時代をつなぎ、結ぶ年ともいえそうだ。時代が変わろうとする中、次の時代を担う人たちに、何を引き継いでいくのか考える時間でもある。関西地域の中核都市として大阪の発展は欠かせないが、主役はあくまでも大阪に暮らす人たち。本紙では年間企画として「なにわに生きる−次代につなぐ」と題し、今を生きている私たちが次代につなぐものは何かを取り上げる。

第1部「生きる力と教育」(4)

2019年1月6日

不登校 重要な自己肯定感

劇を上演する表コミ2年生たち。劇を通して自己肯定感を養う=2018年12月19日、大阪市西区

 何らかの心理的、身体的あるいはいじめなどの要因で学校に登校しない、したくてもできない「不登校」。さまざまな要因が複雑に絡み合い、立ち止まってしまった子どもたちに、明確な解決方法がないのが現状。もがき苦しみながらもハードルを乗り越え、前に進み出そうとしている子どもの背中を押す学校やさまざまな取り組みが、子どもたちをサポートする。

■自分を表現

 大阪市西区にある大阪YMCA国際専門学校高等課程表現・コミュニケーション学科(表コミ)は、全校生徒の7割が不登校経験者。入学したばかりの生徒の多くは、過去の経験から自己肯定感が低い。

 表コミでは、人と関わり合う授業やグループワークなどを通し、自分を表現する方法を学び、社会に羽ばたく力を育てる。

 昨年12月、同校で表コミ2年の劇が上演された。いろいろな事情を抱えた高校生が、野球部を立て直していく物語を生き生きと演じた。3年の川本尚弥さん(17)と岩本愛さん(17)は、後輩たちの舞台を見て3月に控えた卒業公演に向けて、意気込みを新たにした。

■はじける笑顔

 2人は小学生の時、いじめを受けて教室に入れない時期があった。岩本さんは家庭以外で話ができなくなる場面緘黙(かんもく)症になり、中学は筆談だった。

 川本さんは、中学の文化発表会でクラスで団結した経験から、「コミュニケーション力を育てたい」と表コミへの進学を決めた。YMCAのクラブに入っていた岩本さんも「中学生の時の自分を変えたい」と入学した。

 表コミの全校生徒は、何らかの形で劇に取り組む。人前で表現する力だけでなく、1人でも欠けると劇が成立しなくなり、信頼関係がないと物語は進まない。「自分はだめだ」と自己否定していた生徒たちは、劇を通して自分が必要とされる経験を重ね、自己肯定感を養っていく。

 「表コミに来てよかった。ここにいる人たちの影響で表情が柔らかくなった」。人前で話せなかったのがうそのように、岩本さんの笑顔がはじける。

 2人は卒業公演に向けた練習を本格化させる。「いかなる状況にも対応できる力を身に付け、後悔しない生き方をしたい」と、川本さんは目を輝かせた。

■個々に合わせ

 大阪府教育庁は、不登校の傾向をキャッチし、保護者の相談に応じるため、臨床心理士のスクールカウンセラーを1995〜2005年度に全中学校区に配置した。

 複雑に絡み合う要因を見極め、早期発見と対応の観点から一人一人に寄り添う。いかにその人に合った教育が受けられるかどうかが、重要になっている。

 府教育庁小中学校課の石田利伸主席指導主事は「不登校にならないような未然防止の取り組みもだが、幅広いその子に合う教育機会を確保できるかが課題。社会的に自立するのをどのように支援するか、検討を続けていきたい」と話した。(第1部おわり)

 不登校 文部科学省は不登校を「病気や経済的理由以外で、年30日以上欠席する生徒」と定義。2017年度の公表数は約10万9千人に上った。大阪府内の公立小中学校では、01年度の1万1523人をピークに減少傾向だったが、近年増加に転じた。17年度は1万204人で、小学生の増加が目立つ。


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