大阪発 癒やしの温泉巡り

新潟県・村杉温泉 「環翠楼」(上)

2017年12月30日

森に囲まれ 歴史刻む

四季折々の自然の美しさを楽しめる環翠楼の顔である広大な庭園

 五つの頂きからなり、雄大な新潟平野を東方から見守るようにそびえ立つ五頭山。その山麓には出湯・今板・村杉の三つの温泉が2キロメートルの範囲内に湧き、湯治場の趣を今に残す温泉郷が存在する。

 その一つ村杉温泉は1335(建武2)年、足利家の武将だった荒木正高が戦乱を逃れてこの地にたどり着き、薬師如来のお告げによって発見されたと伝えられる。泉質は、全国でも有数のラジウム温泉。1915(大正4)年当時、この温泉のラジウム含有量が日本一と新聞で発表された。ラジウムは古くから新陳代謝を活発にし、心身の疲労回復、美肌効果、老化防止、精力強化などを促進する効能があるとされる。また婦人病にも効くと評判で、子宝の湯としても親しまれている。

 村杉温泉の中の一番の老舗旅館「環翠楼(かんすいろう)」は、約6千坪の広い森に囲まれた客室9室の小さな温泉旅館。明治・大正建築の建物が残り、長い歴史を刻んできた宿だ。北入口の杉並木は村杉温泉の原風景を今に残し、離れの明治の館近くにたたずむ山田寒山の詩がその情緒を物語る。

 創業は江戸末期。当初の宿名は「六蔵(ろくぞう)旅館」。館主が代々襲名してきた「六蔵」という名をそのまま宿名とした。六つの蔵には客のために使われる品々が保管されており、「永きにわたってお客さまに愛される宿でありたい」という館主の願いからそのように名付けたといわれる。

 大正時代に入り、御歌会の点者(てんじゃ)である歌人千葉胤明(たねあき)がこの宿を訪れた際、宿の風情を「緑に囲まれた館」(翠に環まれた楼)と読み、「環翠楼」と命名された。春は山野草、夏は鮮やかな深緑、秋は綿の紅葉、冬はまるで墨絵の世界と四季折々の美しい姿を見せる。大きな庭園に囲まれた明治・大正・昭和、そして平成へと大切に守られてきた建築物はさらなる100年へとぜひ引き継いでほしいと願う。

 私は今年9月8〜10日に温泉学会五頭温泉郷大会出席のため村杉温泉を訪れ、8日に他の仲間3人と一緒に環翠楼に宿泊した。環翠楼の数々の魅力は次週に紹介する。

 (大川哲次・温泉学会副会長、弁護士)

●温泉のプロフィル●
【所在地】新潟県阿賀野市村杉温泉
【電 話】0250(66)2131
【部屋数】9室(本館5室・露天風呂付離れ2室・桧風呂付離れ1室・一戸建離れ1室)
【宿泊料金】1万5千円(税・入湯税別、2人1室)〜※季節限定宿泊プランあり
【日帰り入浴】不可
【入浴付昼食】6千円(税・入湯税別)〜
【休館日】不定休
【交 通】
・JR羽越線水原駅→(車で約10分、宿の無料送迎あり・要予約)宿
・磐越自動車道安田IC→(車で約10分)宿