相羽秋夫のお笑い食べまくり

東京落語「棚という字」

2016年11月5日

落ち着いたアンティークな喫茶

緑の中にたたずむカフェ(右手前が新設のツリーハウス)

 商家の小僧が番頭に「棚という字はどう書く」と尋ねるので「木ヘンに月2ツだ」と、空中へ書いて見せる。小僧も同じように指でなぞった後、手のひらで消す。番頭が「空中に書いた字を消す必要ない」と言うと小僧「だって頭をぶつけるといけないから」。東京落語「棚という字」と題する珍品中の珍品だ。

 平等院で有名な京都府宇治市内で、樹齢170年を誇る楠(くすのき)が自慢の「京都 岡田珈琲(コーヒー)店」では、今年9月に、この木に「ツリーハウス」を作り、棚の上でコーヒーを味わってもらうことを始めた。

 考案者は、現在もビートルズのコピーバンドでエレキギターを担当し、ライブ活動をしている岡田芳崇オーナーだ。1974年に、「心地よい苦味があり、酸味がなく、果実のような甘みと香ばしいコクがあり、それでいて雑味がなく、甘い香りが後味に広がる」コーヒーを提供する店を開いた。林のような空間を切り開き、テラス席も設けた、野趣味たっぷりのコーヒー店なのだ。店内は、19世紀末から20世紀初頭の、茶色を基調にしたヨーロピアン・アンティーク家具が、シックな大人のムードを醸し出している。

 その中で味わう、やさしい味と香りの「マイルド」(515円・全て税込み)、苦味の中に甘味が生まれる深煎(い)りの「フレンチ」(565円)、さらには「ブラジル」「キリマンジャロ」(ともに565円)、「エチオピア」「ゴールデンマウンテン」(ともに615円)などの、自家焙煎(ばいせん)によるコーヒーは、「本物の味を分かってほしい」という岡田さんの夢を実現している。

 この店の大ファンでカラーアナリストの泉令子さんは「茶は暖かさと落ち着きの色です。ここに来ると自分を取り戻すのです」と語る。岡田さんの柔和な人柄も、コーヒーの味をおいしくしている。(演芸評論家)