相羽秋夫のお笑い食べまくり

東京落語 「夢の酒」

2017年9月30日

大阪ワインの醸造所

追随を許さない”大阪ワイン”の「キングセルビーワイン」(左端)

 亭主が昼寝をした時に、昔なじみの芸者と仲良くしている夢を見る。これを知った女房が嫉妬して、義父に「夢の中の芸者に会って、主人と別れるように意見して下さい」と無謀な注文をする。義父は、しぶしぶ昼寝し、夢を見る。芸者と会い意見をする内に相手が酒を出す。「燗(かん)をしてくれ」と頼んだ瞬間、嫁に起こされ、「しまった! 冷やで飲めば良かった」。名人と言われた8代目桂文楽(1971年に79歳で死去)の得意芸の一つ。

 ブドウは、奈良時代にはすでにペルシャなどから日本に伝わっていた。その頃、ワイン状にして飲んだことも文献に見える。まさに“夢の酒”だ。とりわけ、南河内の柏原市一帯は、ブドウ栽培が盛んだったが、いつしか低調になった。そこで明治初期に、当4代目高井利洋社長の曾祖父作次郎氏が、栽培に力を入れ、現在の「カタシモ(堅下)ワイナリー」の基礎を築いた。

 最大のピンチは太平洋戦争終戦直後で、1996年に父から引き継ぐ利洋氏が、ボランティアの人たちの力を借りて栽園開拓に全力を投入して維持し続けた。数少なくなった同業者をまとめて協会を設立し、自ら会長になって大阪ワインの魅力をアピールしてきた。同社が作る「キングセルビーワイン」は70種ほどあり、中でも「河内ワイン」(720ミリリットル1200円、全て税込み)と「柏原ワイン」(同1500円)に人気が集まる。

 これらは直売所で購入可能だ。工場見学をした後、敷地内にある国指定有形文化財の建造物の中で、試飲もできる。通常1杯千円だが、ちょっと豪華な弁当を付けると3500円になる。

 馥郁(ふくいく)とした香り、程よく抑制の効いた酸味、いつまでも口中に残る余韻が、“大阪ワイン”のどこにもない特徴である。「大阪ワインを飲むことは、それを造り出す河内の原風景を残すことにつながります。どうか御愛飲下さい」と語る「関西ワイナリー協会」「大阪ワイナリー協会」高井会長の、ブドウのように澄んだ瞳が輝いた。

(演芸評論家)
100年畑・大阪ワイン 「カタシモ ワイナリー」
大阪府柏原市太平寺2の9の14 072(971)6334 午前9時〜午後5時 無休・要予約