来阪catch

母親像が重なった

映画「八重子のハミング」
監督 佐々部 清
2017年5月7日

30年ぶり復帰の高橋洋子

「高橋さんと升さんがいい夫婦を演じてくださった」と話す佐々部清監督=大阪市西区の新通ビル
高橋洋子と升毅=(C)Team「八重子のハミング」

 映画女優から作家に転身していた高橋洋子(63)が30年ぶりに映画に復活し主演を務めた「八重子のハミング」(アークエンタテインメント配給)が13日から、シネ・リーブル梅田で公開される。若年性アルツハイマーを患った妻を10年間介護した夫を描いた家族ドラマ。「自分の母親がヒロインに重なった」という佐々部清監督(58)に話を聞いた。

 原作は山口県萩市にある神社の宮司をしている陽信孝さんが妻のために書いた短歌と手紙を本にまとめた「八重子のハミング」で、同じ山口出身の佐々部監督はこれを読んで「ずーっと泣きっぱなしだった」という。そして8年前に映画化のため脚本を1人で書いた。

 「1カ月かからずに書き上げて、いろんな映画会社に声をかけたが、話が暗いと全部断られた。4年たってだめだったので一度諦めたが、以前組んだ女性プロデューサーの野村展代さんが『やろう』と言ってくれて、もう一度お金集めから始めて、昨年の3月に萩市で撮影して作り上げた」

 萩市が全面協力し山口県教育委員会をはじめ地元関係者の支援も集まった。平行してヒロイン役に当時、萩市で行われた地元映画祭で「旅の重さ」(1972年)「サンダカン八番娼館 望郷」(74年)が上映され出演者として参加していた高橋が浮上した。

 「映画祭に関わっていた僕が高橋さんのアテンドをしていてピンときた。作家に転向して30年近く映画から遠ざかっているが、今でもとても表情が豊かで、彼女が演じてくれればと思って脚本を渡した。3時間で読んで『やりたい』という返事があった。それで映画が出来ると思った。夫役は僕の前作『群青色の、とおり道』などに出てくれた升毅さん(61)にお願いし、新鮮なキャスティングができた」

 撮影は萩市で約2週間というタイトなスケジュールで行われた。東映のメジャー映画「陽はまた昇る」(2002年)でデビューし「半落ち」(04年)で日本アカデミー賞最優秀作品賞など多くの映画賞に輝く一方で、故郷の下関で撮った「チルソクの夏」(03年)などの小品佳作も撮っており「集中した映画作りができた」と笑みを浮かべる。

 「ロケ場所は観光地ではなく、八重子さんが好きだったというオープニングの田床山や夫婦が歩く藍場川のほとりなどで行った。地元の方が『八重子さんが来た…』と言ってくださった」。八重子が夫や娘の千鶴子(文音)と一緒につかう風呂場は「僕自身が自分の母親とつかった場所。おととし亡くなった母親も八重子さんに重なっていた…」

 文音(29)は長渕剛と志穂美悦子の娘で佐々部作品「三本木農業高校、馬術部」(08年)で女優デビューした。ほかに梅沢富美男、井上順などが共演している。