来阪catch

何かやらねばと思っていた

映画「彼女の人生は間違いじゃない」
監督 廣木 隆一
2017年7月16日

福島の話を普遍的に

「福島の話だが普遍的に描こうと思った」と廣木隆一監督=大阪市北区のGAGA映画関西支社
瀧内公美(右)と高良健吾?2017「彼女の人生は間違いじゃない」製作委員会

 「2011年3月11日は、帰郷するための新幹線に乗っていた」。その後すぐ「RIVER」という映画のクランクインが控えていた。「その撮影中に福島のことを映画に取り入れたいと、主人公だった蓮仏美沙子さんたちと福島に行った。そこで撮った映像をその映画に入れた。その後、何かやらねばと思って、とりあえず小説を書こうと思った」

 被災していわき市の仮設住宅に父親の金沢修(光石研)と住む30歳近い娘のみゆき(瀧内公美)が主人公である。「なじみの脚本家の加藤正人さんに脚色をお願いし、それで視点に客観性を持たせた。それでも撮影現場ではいつもの作品のように冷静になれなかったような気がする」と苦笑いする。

 映画は早朝のいわき駅で東京行きの高速バスに乗り込むみゆきを捉えるところから始まる。「彼女は週末、東京に出てデリヘル嬢の仕事をしている。母親が津波にのまれ遺体があがっていない。父親は保障金でパチンコ通いの毎日で生きる希望がほとんどない。みゆきはそんな父に反発しながらも、何をしていいのか分からない」

 東京に行くと風俗従業員の三浦(高良健吾)が運転する車でラブホテルに行く。「客ともめたりするとボディーガード役でもある三浦が彼女を助ける。その三浦から『この仕事、長くはいけないよ』と助言される。この役は色の付いていない新人だと思い、オーディションで選んだ。瀧内くんがとても頑張ってくれた」

 田舎に帰ると、元カレの山本(篠原篤)がやって来て「もう一度やり直そう」と声をかける。みゆきは「ラブホテルに行って、それで元に戻れるならもう一度やり直してもいい」と誘う。篠原は昨年の映画「恋人たち」で新人賞を受賞した俳優で、瀧内と男女間の微妙なあやを演じている。

 やがて東京の三浦が風俗をやめてまともに自立し、田舎の父親も死体のあがらぬ海に船で出て「寒いだろう」と妻の防寒服を投げて供養し、けじめをつけようとする。「福島の景色も復興で少しずつ変わってきている。あれから5年たって、みゆきの生き方も変わるだろう。そんな福島の今を映画で感じてもらえたらうれしい」

 寺島しのぶ、大森南朋主演の「ヴァイブレータ」(2003年)で映画賞を総なめ後、「余命1ケ月の花嫁」「PとJK」などアイドル映画の売れっ子監督に変身。合間に「さよなら歌舞伎町」などの廣木映画も撮り続けている。次回作は東野圭吾原作の「ナミヤ雑貨店の奇蹟」、柚木麻子原作の「佐藤くんA to E」の2本。今一番忙しいエンタメ監督である。



サイト内検索