来阪catch

エロと闘う時代に

映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」
監督 冨永 昌敬
2018年3月3日

変身し成長した男の物語

「原作の豊かな文体を映画で…」と話す冨永昌敬監督=大阪市内
柄本佑(左)と松重豊=(C)2018「素敵なダイナマイトスキャンダル」製作委員会

 デザイナーで編集者の末井昭(70)のエッセーを映画化した「素敵(すてき)なダイナマイトスキャンダル」(東京テアトル配給)が、17日から大阪のシネ・リーブル梅田となんばパークスシネマで公開される。「エロと闘う時代に、変身して成長した男の物語になった」という冨永昌敬(まさのり)監督(42)に話を聞いた。

 末井は岡山県の高校を卒業し大阪の工場で働いた後上京し、キャバレーの看板描きやイラストレーターを経て雑誌「NEW self」を創刊し編集者に。その後、セルフ出版(現・白夜書房)に入り写真誌「ウイークエンドスーパー」「写真時代」などを担当し大きな反響を集めた。映画は1982年に出したエッセー集「素敵な−」が物語の基になっている。

 「2006年に原作を読んで映画化を考えた。そのとき末井さんは『パチンコ必勝ガイド』を出していて、僕は原作に出てくるエロ写真を掲載した写真誌のことや、母親が隣の青年とダイナマイト心中した事件も知らなかった。『素敵な−』で同誌編集部の人や、警察、家族を同じようなタッチで描いてすごいなと思った」

 写真誌「ウイークエンドスーパー」は映画雑誌としての体裁を持っていて当時の映画ファンも買っていた。「紙上で映画批評などを闘わせながら、エロ写真とは何か。エロとは何か。わいせつとは何かなどと読者の間で騒がれて売り上げが伸びた。今のようなパソコン、スマホの時代ではないので、雑誌の写真を挟んで、編集者は警察と闘った時代でもあったし、読者も参加できた」

 映画は末井青年に柄本佑(31)が扮(ふん)し、警察の担当刑事とやりとりする。「編集内でカンカンガクガクとやりあったりして、さながらそれは出版業界の楽しいよき時代だったかもしれない。あの時代を知らない僕たちは、そんなことで警察と闘っていたなんて、うそのような気がするし、そうやって自分たちを主張する事ができたのはいいことだった」

 冒頭、着物姿の母親(尾野真千子)が帯に数本のダイナマイトを差して歩く姿が映し出される。「なぜそんなことをしたのか分からないが、しかし、彼女はその前に自分の子どもたちに会いに行っている。このシーンは尾野さんが優しく美しい顔で演じており、温かい場面にしたかった」

 妻役で前田敦子、編集部に来た愛人役で三浦透子が好演し、デザイナー時代からの友人に峯田和伸、警察官に松重豊、父親に村上淳が扮している。当時雑誌に出入りしていたカメラマン・荒木の役を音楽も担当している文筆家の菊地成孔が演じている。「主人公は雑誌が発禁になりつぶされてもへこたれない。そのたびに変身し、成長する。人間の内面の屈託が、次第にクリアになる青春映画かもしれない」

 映画主題歌「山の音」を尾野と原作者の末井が歌っている。冨永作品は「亀虫」(03年)から「南瓜とマヨネーズ」(17年)までジャンルは幅広いが、ほとんど青春映画の構図を持っている。愛媛県出身。