来阪catch

万国共通のテーマに

映画「焼肉ドラゴン」
監督 鄭 義信
2018年6月23日

二足のわらじで初監督

「演劇から映画につながって幸せな作品になった」と話す鄭義信監督=大阪市北区のカンテレ
映画の一場面(C)2018「焼肉ドラゴン」製作委員会

 演劇界の人気作家、鄭義信(チョンウィシン)(60)が初めて映画監督に挑戦した「焼肉ドラゴン」(ファントム・フィルム+KADOKAWA配給)がTOHOシネマズ梅田・同なんばで上映されている。「二足のわらじで初監督した。小さな世界の物語だが、万国共通のテーマにつながった」という鄭監督に話を聞いた。

 1993年に演劇「ザ・寺山」で岸田國士戯曲賞、同年に映画「月はどっちに出ている」(崔洋一監督)でキネマ旬報脚本賞を受賞した。「最初から二足のわらじで出発しているので、両方やるのに抵抗はないが、映画は脚本だけだったので、監督をやるのは器が違うという気がして少し考えた。『焼肉』は2008年の舞台の初演から10年たって、時の流れが映画化を促してくれたような気がする」

 芝居は初演でチケットが手に入らないほど人気を集めた。11年に再演、16年に再々演された。「初め日韓共同制作の企画で始まったので、自分の出自である在日韓国人の物語を書こうと思った。それも日韓のはざまで時とともに忘れ去られていくであろう人たちを主軸に捉えようと決めた。僕自身と家族の話も盛り込んだ」

 69年から70年にかけて、兵庫県の伊丹空港そばの集落で暮らす在日韓国人一家の物語。小さな焼き肉店を営む龍吉(キム・サンポ)と妻の英順(イ・ジョンウン)と、長女の静花(真木よう子)、次女の梨花(井上真央)、三女の美花(桜庭ななみ)、そして弟の時生(大江晋平)が一緒に住んでいる。

 「演劇に出た俳優とは違う人をキャスティングした。3姉妹の女優さんと韓国人俳優の両親。姉妹に絡む哲男に大泉洋さん、長谷川に大谷亮平さん。韓国からハン・ドンギュさん、イム・ヒチョルさんも。大泉さんは『焼肉』の芝居の九州公演を見に来てくださっており、映画版に誘うとすぐに引き受けてくれた。みんな大阪弁の芝居だったけど、猛特訓していただいて、うまくいったと思う」

 集落の土地が国有地で一家は役所から追い立てを食らうことになるが、龍吉は「この土地はしょうゆ屋の佐藤さんから買った」と抵抗する。「その台詞は僕の父親がいつも言っていたこと。僕は実際に姫路城の一角の国有地に住んでいた。伊丹空港そばの人たちは九州の炭鉱から来た在日の人も多かった」

 演劇と映画の芝居の展開は一緒だが「長女の静花と哲男が子どものころの話と、時生が小学校でいじめられている場面などをシーンとして加えた。特にいじめは今の時代に続いている問題でもあるから入れたかった。あの時代は大阪で万博があって日本の時代が変わろうとしていた。日本人はノスタルジーを感じる人がいるし、韓国人は在日について知らない人が多く、故郷を出て行く人たちを見て今の移民問題につなげる人もいる。万国共通のテーマになったかもしれない」

 「ラストシーンが映画的で、演劇と違う表現ができた。幸せな映画になったと思う」