日曜インタビュー

女子の反応がいい!

映画「海賊とよばれた男」
監督 山崎 貴
2016年12月11日

諦めずに戦い抜く姿

「僕は戦争体験者の生の声を伝えられる最後の世代」と話す山崎貴監督=大阪市内

 「3丁目の夕日」シリーズや「永遠の0」などのヒット作で知られる山崎貴監督の新作「海賊とよばれた男」(東宝配給)が正月映画として、大阪ステーションシティシネマほかで上映されている。「明治、大正、昭和の激動の時代を、諦めず戦い抜いた男たちを描いた。今回は特に女子の反応がいい」と山崎監督は笑みをこぼす。

 

■「永遠の0」から

 −「永遠の0」と同じく百田尚樹原作に再び挑戦した。

 「永遠の0」は第2次大戦で、零式戦闘機で戦った祖父を孫が現代から振り返る話で、戦争を現代から見つめ直している。その零戦で戦った戦士を岡田准一君が演じた。今回は第2次大戦も挟むが、明治、大正、昭和の時代を通して生きた、軍人ではなく普通の男の一代記で、時代を担った石油業の会社を興し、社員と共に商売で戦った物語。「永遠の0」とは違う方向に行けたと思う。

 −前作が大ヒットしたというプレッシャーはなかったか。

 「永遠の0」はその年の邦画興行収入で1位だったので、大変だということは当然思ったし、岡田君と2度目のコンビ作で、失敗はできないというもう一つのプレッシャーもあった。さらに、岡田君が主人公・国岡鐵造の20代から90代までを演じるということで取り組んだので、岡田君と撮影前に「一緒に戦おう」と声をかけた。

 −時間軸が前後しており、いきなり60歳の鐵造が出てくるので驚かされる。

 老け役はメークに時間がかかるので、その扮装(ふんそう)をしたら一気にその場面を撮るのがいいのだが、この映画は60代がポイントだと思ったので、あえて60代を撮って、また20代に戻るなど、時間がかかったが丁寧に撮っていった。岡田君もマーロン・ブランド、三船敏郎、レオナルド・ディカプリオなどが老け役を演じた映画を見直したりして研究してくれた。

 

■優秀社員が大勢

 −一番描きたかったのはどの辺か。

 戦後、戦争ですべてを失った鐵造が、生き残った社員に向かって「もう一度、日本は立ち上がる!」と生き直すくだりがクライマックスになっている。そして、彼がそういう「諦めず戦う男」になったのかを、北九州の門司港で興した石油販売の会社で、「海賊」と呼ばれるようになる若いころの痛快な話に戻っていく。番頭役の小林薫さん、吉岡秀隆さん、野間口徹さん、染谷将太さんなど大勢の優秀社員に囲まれている。

 −会社のリーダーはどうあるべきかがよく分かる。

 それは今も昔も変わらぬテーマで、本当に国岡鐵造の生き方はそのお手本というか、困難を乗り越えていくパワーがあり、熱がある。モデルは出光商会の出光佐三さん。映画はそのままではなく少し距離を置いて描いているが、1953年に実際にあった「日章丸」事件を「日承丸」と名を変えて描いている。石油がストップしたとき、付き合いがなかったイランに大型タンカーを派遣して仕入れてくるもので、今では考えられない出来事だった。

 −山崎映画の得意技の特撮VFXでみせてくれる。

 船長役が堤真一さんで、当時、イランの石油を抑えていたイギリスを敵に回し、一触即発だったが、彼の決死的な航海が鐵造を救ったし、日本を救った。特撮VFXは「3丁目」シリーズからずっと渋谷紀代子さんにディレクターをお願いしているが、わがチーム「白組」のスタッフは優秀だから、イランのアバダン入港シーンは琵琶湖で撮ったし、冒頭に出て来るアメリカ軍のB−29の東京大空襲や焼夷(しょうい)弾が爆発するプロセスも見どころになっている。

 −奥さん役の綾瀬はるかが美しい。

 国岡商店の男たちもいい男だが、女性の代表で綾瀬さんに出ていただいた。最後にもう一人、著名な女優さんに出てもらっているがそれは見てのお楽しみに。この映画、女子の反応がよくて、人気がある。岡田君をはじめ国岡商店の男優陣がみんな半端じゃない熱い芝居を見せてくれているから。その背景に「戦争」の影があぶり出されていると思う。

 やまざき・たかし 1964年生まれ。長野県出身。2000年に「ジュブナイル」で映画監督デビュー。CGによる特撮VFXで注目を浴びる。「ALWAYS 3丁目の夕日」(05年)で日本アカデミー賞12部門最優秀賞受賞。シリーズ3作と次の「永遠の0」(13年)が大ヒット。「寄生獣」シリーズを経て今作へ。今や日本を代表する監督の一人に。