旅ばな

 外資系シティーホテル、大型リゾートホテルなどの総支配人を経て、現在、ホテル・旅館プロデューサーとしてホテルの再生・運営を主に活動する吉武英行が、旅のエピソードや宿での失敗談、宿の上手でお得な利用の仕方などを連載します。

自分だけの旅を見つける

2018年4月16日
「旅とはなんだろう」。「答えはなかなか見つからないね」

 自分にとって旅とは何だろう。時々、真剣に考えることがある。仕事で移動するのも旅かなと思い、これから旅に出るぞっと構えて出かけるのが旅なのか、現状から逃げたいのも旅なのか逃避なのかよくわからない。

 昔からよく言う「かわいい子には旅をさせろ」「旅は道連れ世は情け」「旅の恥はかき捨て」等々、旅の格言は限りなくあるが、旅は自分に何を気づかせてくれるのか、何のために旅が必要なのか、旅に携わる仕事をしている自分にもいまだに答えが見つからないでいる。

 新しい出会いを求めて、などよく聞くが旅に出なくても出会いはいくつもあるわけで、出会いを求めて旅に出るというのは無理があるように思える。「自分探しの旅」も旅に出なくても平常の生活の中でも探せる。私の感じる旅の定義は、遠く離れている状況をつくり出すことで、自分を外から見ることができるような気がする。

 数年前に弘法大師の出身地でもある四国・香川の善通寺を訪れたことがある。その際、戒壇めぐりを体験した。真っ暗闇の中を手さぐりで進み到達点に弘法大師さんが待つという不思議な空間を進むのだが、そこにたどる道すがら自分の手すら見えず、ただ壁面を手で触れながら進む。その時の心境はただただ魂というか心だけがはっきりと自分の中にいて、肉体的な存在がまったく感じられず、言葉では表現できないほどの感触を味わった。

 短い時間の道程だが、その間不思議に欲や俗っぽい考えはすべて見事に消えている自分に気づき、ある意味、心の旅という意味が少しだけわかったような気がした。

 (ホテル・旅館プロデューサー)