亀井澄夫の妖怪不思議千一夜

富田林市廿山

2018年6月25日

愛があっても人と妖怪、共存難しい

おたつ、頼むから家に帰ろう〜(イラスト(C)合間太郎)

 池を埋めて村のために活用する、というのはよくある話。富田林の九郎五郎池も、元はすごく大きな池だったのが小さくなって黒五郎池、もっと小さくなって黒子池になったという伝説がある。今でも眺めの素晴らしい池で、その美しさから袋屋を営む茂右衛門が埋め立てに反対し、村人は仕方なく少しだけ残すことにした。

 そんなある日、茂右衛門を一人の少女「おたつ」が「袋屋で働きたい」と訪ねてきた。親に死に別れたと言うので働かせてみたら、これがよく気が利いてこまめに働く。5年たって背も髪も伸び、美しい女性へと成長したおたつに、茂右衛門は女房になってほしいと頼み、2人は夫婦となった。

 しかし、袋屋で働く娘たちは「おたつの髪から血が出てた」「生きてるみたいに髪の毛が動く」と、茂右衛門や番頭に告げ口したが「身寄りのないおたつが玉の輿(こし)に乗ったんで、ねたんでるんやろ」と相手にしない。そうしてる間に、2人に子ができた。

 ある日、風呂上がりのおたつが赤子に乳をふくませたまま、うつらうつらしていると茂右衛門がやって来て、はだけた胸元に青いうろこのようなものを見た。つい「それ、なんや」と聞いたら、おたつは真っ青になって、その日から姿が見えなくなってしまった。

 3日も行方がわからず、茂右衛門は赤子を抱えて村の女にもらい乳をして過ごしたが、4日目の夕方、黒子池を通ろうとすると、そこにおたつがいるではないか。でも下半身は竜の姿である。「もういっぺんだけ、やや子を抱かせてください」と言うおたつに「いっぺんと言わず、家に帰って何回でも抱いてくれ」と頼むが、おたつは赤子にお乳をたっぷり飲ませると、涙を流しながら池の中へと姿を消した…。これが黒子池の竜女伝説である。

 人と妖怪は正体がばれると離れなければならない定め。でも化物の女性の方が、たいてい人間よりやさしくて、気が利いて、美しいのはどうしてなんでしょうかねぇ。

 (日本妖怪研究所所長)


最新記事