認知症の人の声伝えたい デイサービス元施設長・矢崎さん 人々との出会い、一冊に

 「この人たちの声に心を傾けてもらいたくて」-。認知症の人を対象にしたデイサービス「モモの家」(米子市米原9丁目)の元施設長、矢崎タミコさん(77)が、施設に通っていた人たちとのふれあいや別れをつづった書籍「小さなデイサービス『モモの家』出会った人々の物語」を立花書院から出版した。認知症を患ったことによる不安と自信の喪失、そこから次第に気力を取り戻していく人たちとのやりとりを伝えている。

 矢崎さんは夫と共に2002年、施設を設立。昨年3月末の退職まで認知症や、高齢期のうつに悩む200人近くの人と相対してきた。施設内でそれぞれに“仕事”や作業に取り組んでもらうと、「今まで通りにできない」と自信を無くしていた人たちの様子が徐々に変化。服用薬に頼らなくてよくなった人や、活力にあふれるようになった人が多かった。

 書籍では、職員とのやりとりを通じて、太平洋戦争など苛烈な時代を生き抜いた人たちの誇りや、認知症に対する偏見と施設に通うことへの葛藤、家族との確執などを伝えている。

 「出来んようになりました。ご飯も作れんようになってしまって…。何も出来んようになってしまって…」とは、認知症によって家事や家族の世話ができなくなったと不安を募らせる女性。野菜の調理といった“仕事”をお願いすると、できるようになって周囲を驚かせ、徐々に自信を取り戻した。

 “怒りんぼ”の男性が、職員と一緒に歩いている時に車からかばうなど、ふとした瞬間にのぞかせる優しさ。荒れた生活を送っていた女子高生がボランティアとして施設に通い、通所者とのふれあいを通じて看護師を目指して大きな一歩を踏み出したといったエピソードも盛り込んだ。

 半面、矢崎さんは認知症に対する社会の偏見はいまだ強いと指摘する。「認知症を患っている方は、自分に向けられる世間の目がどういうものかよく分かっている。家族も同じ。みんなあらがい、もがいている」と強調。だからこそ「社会の価値観が変わらないといけない。そのためにはまず、一人一人が変わらなければ」との思いが募る。

 書籍に取り上げた人は、出会った人たちの中でもごく数人だ。それでも、登場する人たちを通じ「誰でも年を取り、病気になることだってある。この人たちの訴えや叫びを分かってもらえればうれしい」。矢崎さんは願う。

 「小さなデイサービス『モモの家』出会った人々の物語」はA5判238ページ、2200円。鳥取、島根両県の書店のほか、インターネットでも購入できる。

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