その議員定数削減は必要か

市民の相談窓口の減少に危惧

金井啓子の伴走で伴奏

 組織も人も無駄なぜい肉はそぎ落としたほうがいい。人なら、身体に余分な脂肪がつきすぎると動きが緩慢になる。健康にも良いとはいえない。

 会社なら、コストばかりかかって将来性や生産性のない部署を廃止することがある。時間ばかりかかって明確な結論が出ない会議もどうなのか。これも無駄なぜい肉のひとつかもしれない。

 大阪市の横山英幸市長は26日、大阪市議会の定数を削減すると発言した。同市長は「『みんなが納得するまで議論を続けます』では、たぶんまとまらない」とし、市議会で早く決めるよう促した。

 同市議会は昨年2月、それまでの83から81に定数を削減する条例案を可決させ、統一地方選では81の議席を競って125人が立候補した。この上、さらに削減を進めるという。果たしてこれは無駄なぜい肉をそぎ落とすことなのだろうか。私にはそう思えない。必要な血肉まで奪い取っているのではないか。人間なら不健康きわまりない。

 私は以前、大阪府北部の自宅付近で見かけた高齢のホームレスが気になり、知り合いの市議にメールで相談したことがある。市議からは適切な返信が寄せられた。市民の声を聞いてくれる市議には感謝した。

 しかし議員の数を減らすのは、極端にいえば相談できる市議がいなくなるということだろう。「別の議員に相談すればいいではないか」という反応が返ってきそうだが、身近に相談できる政治家はそう簡単に見つかるものではない。議員の数を減らすということは相談の窓口が減ることと同じ意味ではないか。市民にとっては決して良いことばかりではない。

 このような大切な問題にもかかわらず、横山市長は議会に対して「速やかに」と、拙速な行動を促している。なぜ早く決めようとするのか。早く決めないと大阪市議会が体重超過のメタボにでもなるというのか。

 議員定数の削減は、私たちの身近な相談窓口が減るだけではない。選挙の結果によっては少数会派が存亡の危機に立たされる。少数会派の消滅は、少数意見が議会で反映されにくいことを意味する。

 その反対に、市議会で最大会派である大阪維新の会がより影響力を持つ可能性が高くなる。そうなれば、維新と対立する市民や会派の声が届きにくくなる。

 私は議員定数の削減に反対するわけではない。しかし、度が過ぎた削減はかえって大阪市が不健康になりかねない。それが一番の不安だ。

 (近畿大学総合社会学部教授)

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