宮川沿い「膳」のうなぎ

吉武英行 五感の旅

 初夏の日差しを浴びて、数年ぶりに三重県へロングドライブ。今回の小さな旅の目的は「旨(うま)いうなぎ」だ。夏を感じるこの頃、うなぎが恋しいと感じて最初に浮かんだお店が、伊勢路の山奥、そして清流「宮川」沿いに構えるうなぎ「膳」だ。

 神戸から3時間弱の行程はちょうどいいドライブ距離だ。津市は隠れたうなぎのメッカであることはご存じだろうか。以前は筆者も知らなかった事実であり、消費量は全国1位であることに驚嘆した。てっきり浜松辺りがトップと思い込んでいたが、見事に外れた思いであった。

 以前に伊賀のリゾートホテルのコンサルティングで1年程滞在した時期にうなぎ巡りをしたことがあり、改めて三重県のうなぎのクオリティーの高さを痛感した思い出がある。どこのお店も間違いなくうまいうなぎを味わえたが、津市以外のこんなに人里離れた地で最高のうなぎを食べることができるとは夢にも思わなかった。それくらいの衝撃であった。

 抜けるような青空の下、伊勢道を快走。勢和多気から茶畑が連なる街道を走り、なかなか見つけにくい看板を見つけ、細い急坂を下りると、日差しに反射する清流宮川の畔にたたずむのがうなぎ「膳」である。数年ぶりの訪問によだれが出そうになるのをこらえ、お店に向かう。お昼少し前だが、もう行列ができているのはさすがだ。度会郡度会町。到着するまでの街道が美しすぎて、疲れを全く感じさせない最高の風景である。

 この地は「旨し国、伊勢」とも言われ、昔から「お伊勢さん」で栄え、近隣には数々の美味がある。前に来たときは「うな重特上」を頂いたので、今回は「白焼き」と「うな丼」を注文。この店のラインアップはかば焼きとごはんの量に比例していて、肝吸いと漬物が付いている。うな丼、うな重にそれぞれ花・月と美しい名前が並ぶのもうれしい。伊勢路を訪れる機会があれば、ぜひ一度「最高のうなぎ」を体験してほしい。絶対に期待を裏切ることはない(笑)。

 (ホテル・旅館プロデューサー)

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