1961年創業で半世紀以上に渡って地元から愛されている扇雀食堂(倉吉市大正町)。和食、洋食、中華などメニューは幅広く、「何でもおいしい」が魅力の名店だ。実は、大相撲の落合改め伯桜鵬関(19)=本名落合哲也、倉吉市出身、宮城野部屋=も足しげく通っている。いつも頼むというたこやき(明石焼き)と若鶏の唐揚げ、ギョーザ、中サイズのご飯、豚汁のセット。5品をまとめて「令和の怪物さん定食」とし、名古屋場所(7月9日初日・ドルフィンズアリーナ)に合わせて売り出すことになった。伯桜鵬関が愛してやまない品々は一体どんな味なのか。記者が食レポに挑戦してみた。

地元から料理の力で応援
伯桜鵬関の実家は扇雀食堂の近くにある。伯桜鵬関が幼い頃から、祖母がギョーザやたこやきなどをよく持ち帰っていたという。伯桜鵬関が鳥取市の中学に進学した後から、地元に戻ると来店するようになった。来店した際は、お気に入りの5品を1、2人前ずつ注文して、家族とシェアしながら食べている。

店員たちからは親しみを込めて「哲ちゃん」と呼ばれており、店内には各年代の伯桜鵬関の写真やサイン、活躍を伝える新聞記事の切り抜きなどが貼ってある。元々、伯桜鵬関にちなんだ5品をまとめた定食を考えていたが、一度に調理するには人手がいり困難なため、断念した。
しかし、相撲ファンのお客さんから「伯桜鵬関の大好きなものを食べてみたい」という声を多くもらった。そして、十両として挑んだ夏場所(5月)での圧巻の快進撃を見て元気をもらい、「倉吉から料理の力で応援しよう」と定食化を決めた。

定食名は悩みに悩んだ。店員たちの中ではさまざまな案が出た。伯桜鵬関が演歌歌手・吉幾三さんが好きということで「よしっいくぞ!定食」、伯桜鵬関のいきおいを生かして「快進撃定食」、ますますの活躍を願って「横綱定食」など。最終的には伯桜鵬関本人に決めてもらおうと話をすると、「令和の怪物さん定食でいいんじゃないすか?」と答えてくれたという。
わんぱくメニューに思わず笑み
お店の協力を得て、販売前に令和の怪物さん定食を特別に食べさせてもらった。目の前に定食が運ばれてくると、そのボリュームとわんぱくさに思わず笑ってしまった。メインが3品もありそこに豚汁とほかほかのご飯。まさに「男の子が大好きなものを集めた夢のメニュー」といった感じだ。

記者は唐揚げが好きなので、まずは唐揚げから食べてみた。衣はさくさくで、しょうゆがしっかりと染みている。鶏肉も柔らかく、かめばかむほど味わいが深くなる。記者が好きなタイプの唐揚げだった。

次に名物のたこやき。箸で持った段階で分かる生地のふわふわ加減。ユズ香る自家製だしにつけて頬張ると、口いっぱいに卵の甘みが広がった。

ギョーザはニンニクとショウガがガツンと効いた一品で、もちもちの皮の食感も良い。豚汁は豚肉の脂と野菜の甘みでほっとする味わい。どの品を食べてもご飯がどんどん進む。思わず、おかわりしてしまったほどだ。

食材は県内産のものをふんだんに使用しており、改めて鳥取が食の宝庫であること、良い食材をたくさん食べて〝令和の怪物〟が生まれたことに納得がいった。
気がつけば「ごっつあんです!」と完食しており、おなかはパンパン。大食いな記者でも大満足の内容だった。
哲ちゃんに食べてもらって改良を
店員の古瀬聖子さん(42)に「哲ちゃん」との思い出を聞いてみた。「哲ちゃんはすごく謙虚。来店した時によく話しかけるが、照れた感じで接してくれる」と笑う。しかし子どもの頃から、大相撲で活躍し横綱になるという夢は語っていたそうだ。

気になる食べっぷりについては「意外と普通。たこ焼きを50個食べたとかいう『伝説』はなく、一品ずつしっかり味わってくれている」と教えてくれた。
新定食を命名してくれたが、機会がなく本人はまだ食べられていないという。「次来た時はぜひ食べてもらってどんどん改良していきたい」と意気込みを語った。
遠藤関と並び昭和以降最速で新入幕を果たした名古屋場所を控えて「新入幕おめでとうございます。倉吉から料理で応援しているので、けがには気をつけて土俵の上で大暴れしてください」とエールを送った。

令和の怪物さん定食の価格は1500円。各場所中の営業日に販売する予定。古瀬さんは「何度も言って申し訳ないが作るのが大変。混み合っている際は、お時間いただくこともあります…」と理解を求めた。
躍進を続ける古里のスターの大好物。あなたも来店し、おいしさを確かめてみては。(黒阪友哉)