澪標 ―みおつくし―

想像力の大切さ

四辻 伸吾
大阪教育大学付属平野小学校 副校長
2019年10月14日

 「人の気持ちを想像すると思いやりの気持ちが生まれます。自分の将来を想像するとしっかりとした人生を歩むことができます。たくさんの想像をして素敵(すてき)な人になって下さい。ご卒業おめでとうございます」。私は小学校の卒業記念文集に毎年このようなメッセージを寄せることにしています。

 私の大好きなビートルズのジョン・レノンは、「イマジン」という曲の中で「すべての人々が平和にくらしていることを想像してごらん」と歌っています。決して「平和な世界にすべきだ」などと言っているのではなくて、「平和な様子」を「想像してごらん」と言っているに過ぎません。しかし、この「想像」が子どもたちの力の原点になることを、私は教育現場で伝えたいと考えています。

 たとえば「キャリア教育」の視点でも、原点は「自分の将来の姿を想像する」ことではないかと考えます。「将来お医者さんになってたくさんの人たちを助けたい」という強い思いは、自分が医者になって、患者さんたちを助けている姿を想像することが土台となっていると思います。友だちに対する「やさしさ」「思いやり」の気持ちも、「自分の側からはこのように見えるけど、相手から見るとこんなふうに見えるかもしれない」という、自分から見ることのできない他者の視点を想像することから始まります。

 さらに「安全教育」の視点でも「想像力」が働かされます。Aという行動とBという行動の二つの選択肢から一つの行動を選ばないといけない局面に迫られるときに、「Aという行動をとったらその後どのようになるのかな」「Bという行動をとったらその後どのようになるのかな」と二つのパターンを想像し、より安全の度合いが高い場面を想像することができた方の行動をとると、危険な状況を避けられる確率はより高くなると思います。

 小学生は6歳から12歳という日本の学校教育現場としては最も長い年月である6年間を同じ学校で過ごします。その間子どもたちは身も心も大きく成長していきます。家族や教師など身近な大人が言うことが絶対であった低学年の時期から、高学年に進むにつれて、徐々に「ギャングエイジ」と呼ばれる仲間意識が強くなる時期を迎え、付和雷同的な行動や、大人への反抗も見られるようになります。

 この付和雷同的な行動を見せてしまう時期こそ、「想像力」を働かせる場面をいかに多くするかということが重要であり、その後の子どもたちの成長に大きくかかわっているのではないでしょうか。社会的に正しくないことだとわかっていても、友だちがしているからあまり何も考えずに同じような行動をとってしまうようなことが、思春期の子どもたちにはよく見られます。しかし、その行動をとることで、1時間後、2時間後、あるいは1週間後という未来の自分がどのような状況におかれることになるのか、じっくり想像することが非常に大切です。

 「もし相手を傷つけることを言ってしまったら、その後、相手は自分のことを信頼できなくなってしまうかもしれない」、「今日すべきことをしないままで過ごしてしまうと、明日以降の自分は大変苦労してしまうかもしれない」など子どもたちが「もし〜だったら、○○となるかもしれない」と考えることは、まさに子どもたちが日常生活のさまざまな場面で想像力を働かせている場面だと言えます。

 教育現場におけるさまざまな場面で、子どもたちが想像力を働かせることができる機会を可能な限り作り出していくことが、子どもたちの健やかなる成長につながっていくと信じ、これからも教育活動にまい進していきたいと考えています。

 (大阪市平野区、よつつじ・しんご)



サイト内検索