澪標 ―みおつくし―

毎日が魔訶不思議 西成のクラシック音楽バー

佐竹 昭彦
クラシック音楽バーココルーム 店主
2020年2月24日

 そろそろ開店から4年。日々強烈な時間、空間を過ごしている。日頃から変な出来事が多く、変な常連たち、次から次へとやって来る新手の濃い客層に囲まれつつ、ふと我に返ると「この店、クラシック音楽バーのはずだよな?」とキツネにつままれ、「なんでこうなるんだぁ!」と自問自答すること、ほぼ毎週。だが大きな問題はなく、ちゃんと健全に営業している。

 少々問題があるとしたら、コンビニの廃棄物をごみ袋ごと拾い、自転車の前後に積んで、毎週、賞味期限切れの弁当を売りつけにくるオッサンがいる。賞味期限切れのカラシの小袋10キログラム相当を押し売りに来たときはケンカもした。「いらんわ、こんな大量!」。

 また、どっかから拾ってきた角材を「古武術で使うトンファーやから、これでウイスキー飲まして?」と物々交換を迫って来た元介護職員もいた。「誰と戦えってんだ!」。

 終電を過ぎて酔っぱらった客を私の家まで連れてきて、私は妻の寝室で眠り、彼は私の部屋で眠らせたはずが、翌朝、なぜか尻丸出しでリビングで転がっていた某公務員の青年も強烈だった。酔って、清原選手の物まねをする台湾人がいたり、橋下元知事そっくりの女装おじさんは、酔って歌劇「道化師」を鑑賞中に泣きだしたり。

 近隣のカラオケ居酒屋からは、リズム感や音の高低が完全に崩壊した、男性のバカデカい歌声が聞こえてくる。曲目もおかしい。なぜ西成で「てんとう虫のサンバ」を歌いたくなったのか。そんな環境の中、当店ではソフロニツキーが弾くショパンや、シェルヘンのオッフェンバックの序曲やフリッチャイのシェヘラザードが鳴り響く。

 思い起こせば開店初日から変だった。まず最初のお客さんたち7人が、近隣の飲み屋で知り合ったロックンローラーで、店内で勝手に「酒と泪と男と女」を歌いだした。「クラシック関係ないやないか」と思っていたら、頭にバンダナを巻き、ギターを背負ったタンクトップの40代の男が入店し「1曲、歌っていいですか?」と言い「もののけ姫」の主題歌を裏声で披露。特に上手でもないが、みんな一応、拍手をした。そして、彼は何も注文せず去って行った。え? 今のタンクトップ、誰かの知り合いですか? と周りに聞いても「店長の友達じゃなかったの?」と全員が首をひねる。真相は謎のままだ。

 こうした未知の試練とあまたの謎を乗り越え、なんとかクラシック音楽バーとしても認知され、なぜか昨年の秋には関西のラジオやテレビ番組の特集で当店が紹介された。どうして、こんな店がニュース番組の特集に? これも謎である。これから先もどんな方向へ進むのか謎の中、さらに面白い店にしていきたい。今後ともよろしくお願いいたします。

 (大阪市西成区、さたけ・あきひこ)



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