澪標 ―みおつくし―

「良いところ見つけ」について

四辻 伸吾
大阪大谷大学教育学部准教授
2020年8月3日

 小学校現場ではよく「良いところ見つけ」という取り組みが行われます。児童同士がお互いの「良いところ」についてメッセージカードを交換しあったり、「終わりの会」で「本日の○○さんの良いところ」という形で発表したり、教師が一人一人に対して「良いところ」を伝えたりと、その方法は学級によりさまざまです。現職に就く前は小学校教員として長年勤めてきた私も、学級担任だったときにはこの「良いところみつけ」を行うのが非常に好きで、さまざまな形で取り組んできました。

 ところが、この「良いところ見つけ」の取り組みは、十分な計画を立てないまま安易に行ってしまうと、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあります。

 例えば、冒頭に紹介したように、「お互いの良いところ見つけ」として、メッセージカードをつくり、児童同士で交換をするという取り組みをする場合には、児童同士がメッセージ交換をする前に、教師がしっかりとメッセージの内容をチェックしないと「良いところ」どころか、ついついふざけてしまって相手のことをからかったり傷つけたりしてしまう言葉が書かれてあるようなことがあるかもしれません。このようなことがあると、せっかくの取り組みが台無しになるどころか学級にとってマイナスになってしまいます。あるいはメッセージカードの中に自分に対する「良いところ」が書かれてあったとしても、「これは本当に自分の良いところなのかな」などのようにその児童にマッチングしていないようなメッセージが書かれてあったとしても、うれしい気持ちにならない可能性があります。

 この「これが本当に自分の良いところなのかな」という部分が、「良いところ見つけ」で特に重要な視点ではないでしょうか。例えば、普段からなかなか自分の意見を言うことができずに、「もっと自分を出してみんなから明るく、面白い人だと思われたい」と思って自分なりに努力をしている児童がいるとします。その児童に対して「○○くんは本当に真面目ですね」のようなメッセージを送ってしまうと、この児童は一体どのように感じるでしょうか。「『○○くんは本当に真面目ですね』というメッセージは、結局みんなにとって『あまり面白くない人』という意味なのかな」と解釈してしまうかもしれません。

 これをふまえると、「良いところ見つけ」の取り組みには、まずお互いをしっかり「知ろうとする」ということが必要です。「この人はどんなことが好きなのかな」「この人はどんなことが苦手なのかな」「あの子は今どんなことをがんばっているのかな」など、これまで着目しなかったような視点からその人をしっかりと見つめるということが欠かせないように思われます。

 特にこの「今どんなことをがんばっているのかな」ということを見つめることは、その人が自分自身について成長させたいと思っていることに着目することになり、それを「良いところ」として認識することはその人のさらなる成長への動機づけとなっていきます。

 また「良いところ」という考え方自体に価値判断が含まれてしまっていますので、「良いところ」よりも「その人らしさ」「その人の持ち味」というものに着目することがより重要ではないでしょうか。つまり「良いところ見つけ」という発想自体、その人の持つ「良いところ」にしか注目しないという風に考えられます。「良いところ見つけ」以上に「その人らしさ」を認め合うということがより大切です。

 その人がその人であることの素晴らしさやその人のネガティブな面、あるいはその人が失敗してしまったことも含めて、「○○さんらしいね」と言ってほほ笑み合い、お互いの「その人らしさ」「その人の持ち味」を認め合うことができる人間関係をつくることができたらすてきですね。

 (大阪市平野区、よつつじ・しんご)



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