澪標 ―みおつくし―

アートクラスの日常

みまきんぐ 研究美術家
2021年2月8日

 触ること、舐(な)めること、匂うこと、聴くこと、見ること。そして、思い感じること。子供という生命体は嫌でも毎日身体全体で五感をフル活動させているはずだったが、今や自然に普通に生活していれば、ほぼほぼ目と手先と心だけの世界。なので、アートクラスではなるべく五感全体を動かせる場にしたい。

 造形教室だけど、夏はプールに入り放題。大人的にはプールなど1日に一度入れば気が済むと思うのだが、子供のエネルギーは循環型のようで、1日に何度でも入る。水を全身で感じ、暴れて、今度はスライムを作って、大量のスライムを小型プールに入れて、入る。(感覚器=触覚、素材=水)

 感覚器が満たされてやっと、この世にはいろいろな素材がある事を知る。木、火、土、金属、水という古くからあるものから、プラスチック、発泡スチロール、スライムやシェービングの泡やジェルなども。創造性はそういった素材を組み合わせて操って何かを作り出す作業。

 そのためには素材に適した道具がある。アートクラスではなるべくたくさんの素材を用意して自由に組み合わせられるようにしている。私の仕事はそのための素材収集と道具の用意に徹している。教えるのではなく、子供がこうしたいと思った時の道具はこれが一番いいよと提供、子供的に受け入れられれば道具の使い方を一緒にやってみる。子供によっては怖いものもある。それなら他の方法も提示。到達点までにはいろいろな方法があっていい。脱線してもいいし、未完成でもいい。

 発泡スチロールをボロボロにならずに熱伝導できれいに切れるカッターがある。それを幼稚園の子でもどうにか使って切る。そしたらほのかに臭う。臭いがイヤだったら、カッターで切る方法もある。クッキングも自由だ。クッキーを焼くのもみんな大好き。焼け始めは何も匂わないが、焼き上がりに近づくと、いい匂いがする。そんな匂いを感じるのも大事な事。(感覚器=味覚と嗅覚、素材=発泡スチロール、小麦粉、砂糖、熱)

 ここでは決まった工程をみんなで一緒に進めるという方法をあまり取らないようにしている。工程を教える形を取る時はワークショップなどの特定の完成品がある時だけ。アートクラスの中だけでは体験できない事をワークショップの形で、お出かけスケッチや、六甲のまゆスタジオへ本格的陶芸体験や、作った陶芸作品のスタジオでの野焼きなどを行っている。(素材=土、火)

 本年度はコロナ禍にあって、いろいろ制約がかかった。それでも常に誰かが電動ドライバー使って秘密基地を作り(感覚器=聴覚、素材=木)、夜のアトリエの庭をヘッドライトつけて鬼ごっこし(感覚器=視覚、素材=光)、食べたいものを友達と半分量で計算しながらクッキングしたけれど、塩の量だけ半分にするのを忘れて塩辛いパンができたり(感覚器=味覚)、子供たちの自発性をなるべく阻害しないよう、でもけがしないよう、多分、私が一番五感をフル活用して見守っている。

(大阪府茨木市)


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