澪標 ―みおつくし―

救世主?! ワクチン

澤井 貞子
大阪府眼科医会理事
医療法人沢井眼科院長
2021年6月15日

 連載も4回目となり、そろそろコロナの話を。コロナ禍もとうとう2年目、出口が見えない暗たんとした世の中の唯一の打開策が、ワクチンだ。その待望のワクチン接種がやっとやっと一般高齢者向けに始まった。テレビも連日ワクチンの話題。ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ−−海外の製薬会社名だが、覚えられただろうか?

 そもそもワクチンとは、感染症の原因となる病原体の力を弱めたもの(生ワクチン)、または全く増殖できないもの(不活化ワクチン)を体内に注入(予防接種)し、抗体(免疫)を作らせて感染予防するものだ。結核のためのBCG、はしかやポリオ、インフルエンザワクチン等が一般に知られている。

 新型コロナウイルスに対しても、世界中でワクチン開発が一斉に始まった。ただ昨年の今頃は、ワクチン普及には数年はかかるだろうと言われていたのに、なんと昨年末には、イギリス、アメリカ等で一般接種が始まった。聞けば今回のファイザー社やモデルナ社のワクチンは、現代科学の最先端の遺伝子ワクチン、中でもmRNAワクチンだそうだ。といっても、大昔に医学部を卒業した眼科医の私には、何それ? とにかく新しいタイプのワクチンらしく、今回初めて実用化された。

 遺伝子といっても、mRNAは遺伝子そのものではなくその設計図の一部で、理論的には人の遺伝子に入ることは無く、安全で効率的。今のところ、問題となる大きな副反応も見られず、さらに有効率が95%と、とんでもなく高い。こんなに効くとは、たぶん作ったファイザー社やモデルナ社も予想していなかったのではないか。もしかしたら神様のお慈悲かもしれない。ワクチン接種後の人を調べてみると、コロナに感染した場合と同等以上に免疫ができていたそうだ。あらためて、すごい!

 日本への導入は、アメリカやイギリスに比して遅れた。ただ昨年末は、欧米で接種が始まった映像を見ながら、「いやいや、欧米で数千万人に先行接種してから日本で開始する方がなにかと安心」と思っていた。しかし日本へのワクチン搬入は、予定よりさらに遅れ、接種事業も年初計画より2カ月近くも遅れての開始となった。待ちくたびれた国民が殺到するのも無理はない。接種を先行し、今やマスクを外して開放されている英米人を見ると、うらやましくて涙が出そうだ。

 大阪では、4月半ばに新型コロナ第4波で重症患者が一気に増え、準備された重症病床数を大幅に上回った。同時に軽症・中等症病床もあふれ、一時は自宅療養者が1万5千人を超えた。皆さんさぞかし心細く過ごされたことだろう。そして、生死の境をさまよう重症患者を一人でも多く救おうと奮闘されている病院の方々には、本当に頭が下がる。

 今度は、日常診療の最前線にいるわれわれ開業医が、接種を希望する一人でも多くの方々に、できるだけ早くワクチンを接種してもらい安全域に送ること、これが課せられた使命だと思う。

 (大阪市浪速区、さわい・さだこ)



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