なにわに生きる 次代につなぐ

 2019年が明けた。平成と新元号をつなぐ節目の年となる。新しい時代をつなぎ、結ぶ年ともいえそうだ。時代が変わろうとする中、次の時代を担う人たちに、何を引き継いでいくのか考える時間でもある。関西地域の中核都市として大阪の発展は欠かせないが、主役はあくまでも大阪に暮らす人たち。本紙では年間企画として「なにわに生きる−次代につなぐ」と題し、今を生きている私たちが次代につなぐものは何かを取り上げる。

第3部「防災」(下)

2019年9月3日
最新機器を活用して災害の情報収集や体験の機会を提供している市立阿倍野防災センター=大阪市阿倍野区

 「やらされる訓練」ではなく、「やりたくなる体験」を通して災害に備える。そんな環境や仕組みづくりが進んでいる。より現実に即した被災体験ができる施設や、遊び自体が技能向上につながる仕掛けも。目指すのは、誰もが楽しみつつ、当たり前のように防災力を身に付ける社会だ。

■リアルさ追求

 押し寄せる津波や降り注ぐガラス−。先端技術で臨場感たっぷりの体験ができるのは、大阪市阿倍野区の市立阿倍野防災センター、通称「あべのタスカル」。夏休みに合わせて家族で訪れた小学5年の伊崎珠美さん(11)=神奈川県=は「ちょっと怖い体験もあったけれど、避難のための備えをしようと思った」と真剣な表情を見せた。

 施設は4月にリニューアルオープンしたばかり。市消防局の畑中紀子消防司令補は「リアルさを追求し、“自分事”にできるようにこだわっている」と特徴を話す。

 入り口正面には、市全域の被害想定を映し出す直径3メートルの円形スクリーンを台状に設置。来場者が被災状況をイメージできるようにした後は、高さ約6メートルあるスクリーンで津波に襲われる映像を流したり、映像と起震装置で南海トラフ巨大地震の揺れを体感させたりする。

 来場者が体を使うエリアもある。消火器の操作をはじめ、ジャッキによる人命救助からエレベーターで閉じ込められた場合のボタンの押し方まで用意。自営業の堀川大助さん(50)=大阪市此花区=は「身をもって学べるのが良かった」と振り返った。

 施設の体験エリアには1日数百人が来場する。クイズやダンスで子どもが楽しめるスペースもあり、畑中消防司令補は「家族みんなで楽しんでもらえる」と来場を呼び掛けている。

■野外活動の知恵

 災害対策には、日々の実践が不可欠といえる。持続可能な手法の一つとして提案されているのが、野外活動だ。

 子ども向け博物館「キッズプラザ大阪」(大阪市北区)は今夏、「サバイバル」をテーマに体験型イベントを展開した。アウトドアで使えるコップや皿を作るプログラムをはじめ、段ボールで作った迷路を通して非常時の対応方法を学ぶ場などを用意した。

 昨年起きた大阪での災害を踏まえて企画した、吉村幸子・事業プロデューサーは「アウトドア活動は、災害時の備えにつながる」と強調する。

 実践方法を提案しているのが、アウトドア用品メーカー「モンベル」(同市西区)。1995年の阪神大震災で、テントや寝袋を被災地に届ける支援を展開したところ、有効性に気付いた。

 自然の中でのテント生活と、電気や水道といったライフラインが断たれた避難生活は、求められる道具や知恵に多くの共通点があったからだ。必要な品の組み合わせや使い方を、継続的に発信している。

 同社担当者は「ただ用意しているだけではだめ。日頃から使ってはじめて、災害への対応力が身に付く」と指摘。楽しみながら備えることの重要性を説く。

 次代に防災の文化を根付かせられるか。選択肢が広がる今、一人一人の行動力が問われている。

体験型防災学習施設 体験を通して災害対策について学ぶ施設。府内では、大阪市立阿倍野防災センターのほか、津波や高潮発生時の対応を学べる同市西区の府の「津波・高潮ステーション」、東大阪市の市民向け施設「消防局防災学習センター」などがある。


サイト内検索