街と人 なにわの夢

 大都市・大阪の街は時代とともに変化してきたが、そこには人々の暮らしが息づいてきた。今後、街の姿はさらに大きく変貌していくことが予想される。目に見える変化だけでなく、暮らしを取り巻く環境もまた同じだ。街と人に焦点を当て、令和時代の変わりゆく大阪を見つめる。

第1部「進化続ける」(2) いまざとライナー運行中

2020年1月5日

地下鉄延伸の試金石

オレンジ色の車体が特徴的な「いまざとライナー」=大阪市東住吉区の「地下鉄長居」停留所

 大阪市営地下鉄の経営を引き継ぐ「大阪市高速電気軌道株式会社」(大阪メトロ)が誕生したのが2018年4月。公営地下鉄初の民営化という華々しいデビューから1年後、市が実施主体、大阪メトロが事業主体となるバス高速輸送システム(BRT)「いまざとライナー」の運行がスタートした。現在は今里駅(同市東成区)で終着となっている地下鉄の今里筋線を南へ延伸する上での需要喚起や、鉄道に代わる輸送手段としての可能性を検証する役割を担う。

■需要喚起を

 いまざとライナーは「地下鉄今里−地下鉄長居」と「地下鉄今里−あべの橋」を基幹ルートとする2路線。運行は午前6時台から午後11時台、平日の午前7時台から午後6時台は今里筋線のダイヤに合わせて20分間隔で走らせている。

 利用者は通勤、通学の足としてだけでなく、各線が乗り入れる天王寺駅や長居公園にも止まることからレジャーとしての活用も。週末は長居を本拠地とするサッカーJリーグセレッソ大阪のユニホーム姿で車内が埋まる時間帯もある。

 市都市交通局が昨年4〜6月に実施した調査によると、2ルートの1日当たり平均利用者数は最も多かった平日(6月)で1937人、1便当たりでは10・3人となった。

 需要を喚起していく取り組みとしては、内装のデザインを車両ごとに変え、ヒョウ柄の座席やスイーツをちりばめた壁面などを用い、「わくわく感」を演出。大衆居酒屋やギョーザ専門店などのグルメをはじめ、コリアタウンや植物園といった沿線の魅力を盛り込んだ「いまざとライナー読本」を8万部発行した。

 市は利用者数や住民の満足度を調査した上で、導入から5年をめどに効果を検証する。市の担当者は「もっと地域の方に利用してもらえるよう努力していきたい」としている。

■採算は厳しい

 とはいえ、地下鉄を延伸するとなると、条件はかなり厳しい。

 14年には、有識者でつくる「市鉄道ネットワーク審議会」が、地下鉄延伸による事業化の可能性を「極めて厳しい試算結果」と答申。国内外でBRTやLRT(次世代型路面電車システム)を導入して市街地の活性化に成功した事例を挙げた上で、「多様な公共交通システムの導入可能性も含め、幅広く検討する必要がある」と回答した。

 BRT社会実験は、地下鉄民営化の「基本方針案」に賛成する条件として、民営化に慎重だった市議会自民党が、市が大阪メトロ株を100%保有することなどと共に求めた経緯がある。ただ、地下鉄延伸を巡り、市の姿勢は「巨額の税を投入することになり、収支見通しも厳しい」(吉村洋文市長=当時・現府知事)と一貫している。

 地下鉄未整備の地域で、BRTが市民の足として活躍できるか。市都市交通局の担当者は「まずはいまざとライナーの認知度を高めることが大事。その都度で改善点を抽出して需要喚起につなげ、大阪メトロとも引き続き連携していきたい」と展望している。

ミニクリップ
 いまざとライナー 大阪メトロ今里筋線の未着工部分(今里−湯里六丁目)6・7キロを含む区間で運行を始めたBRT(バス高速輸送システム)。社会実験として昨年4月から導入した。2ルートを設定した上で、利用者数や住民の満足度などを調査し、5年をめどに地下鉄延伸の可能性を含めた今後の在り方を検証する。


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