街と人 なにわの夢

 大都市・大阪の街は時代とともに変化してきたが、そこには人々の暮らしが息づいてきた。今後、街の姿はさらに大きく変貌していくことが予想される。目に見える変化だけでなく、暮らしを取り巻く環境もまた同じだ。街と人に焦点を当て、令和時代の変わりゆく大阪を見つめる。

第3部「多様性」(1)LGBTと企業

2020年7月24日

個を尊重し働きやすく

人事担当者と意見交換する当事者の男性社員(手前)=大阪市淀川区のリアズ

 さまざまな人が暮らす街、大阪。似た者同士もいれば、関わりのない人もいる。同じ街で生きる者として、互いを認め、誰もが否定されないためにはどうすればいいのか。第3部では多様性の大切さが叫ばれる中、職場や学校、地域での共生社会に向けた取り組みを紹介する。

 「会社が同性のパートナーを、婚姻関係と同等に認めてくれるのは素直にうれしい」−。ライブ配信サービス運営会社「リアズ」(大阪市淀川区)は、「同性パートナーシップ制度」を今年1月に導入。ゲイの20代男性社員は制度を歓迎し、「パートナーの存在について、これからの人生とともに考えていきたい」と将来を見据えていた。

 同社は、事業の一環で性的少数者に対応したサービスを展開しており、婚姻が男女間のものという固定概念を疑問視して制度を構築。自社の就業規則に該当する特別休暇や結婚祝いなどの諸手当について、性別を問わずに利用できるようにした。

 申請は、婚姻届の提出のように同市などで「パートナーシップ宣誓」をし、それを証明する書類などで受け付ける。金子大助社長は「できることをこつこつと積み重ね、少しでも多くの方の働きやすさにつながれば」と思いを込める。

■不利益な扱い

 近年、性の多様性を尊重し、個人の社会参加の機会を制限してはならないという機運が高まるとともに、企業にも対応を促す動きがみられる。

 性的少数者(LGBTなど)を巡っては、大阪府が2019年度に条例を制定。事業者には理解増進の取り組みを求めた。大阪市は18年度、性的少数者が働きやすい職場環境を積極的につくる事業者の顕彰制度「LGBTリーディングカンパニー認証制度」の運用を開始。こうした取り組みが少しずつ広まっている。

 ただ、いずれも緒に就いたばかり。厚生労働省が19年度に行った初の実態調査では、何らかの配慮をしている企業は全体の約1割にすぎない。働く上で困ったことがあった労働者の割合は「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル」のうち4割弱、「トランスジェンダー」は5割余りに達していた。

 「人事評価で不利益な取り扱いを受けた」「模範となる人がいないため将来の理想像が描けない」など、生産性の低下を招きかねない内容も多い。人材の定着や従業員の働く意欲向上のためにも、取り組む必要性が浮かび上がる。

■相互理解の風土

 LGBTをはじめ、多様な人の働きやすい職場作りを事業展開している、「アカルク」(同市北区)の堀川歩社長は「少数派の人が働きやすい会社は、多数派の人にとっても働きやすい会社になる」と、推進の意義を説く。個を尊重し合う風土が築かれるためだ。

 自身も、体は女性として生まれたが、幼少期から心は男性と自覚していた一人。就職時に伝えると採用条件が切り替わるといった体験もしたが、多様性を受け入れる企業の下で活躍の幅を広げてきた。

 「マイノリティー、マジョリティーという言葉やすみ分けをなくし、個と個との相互理解を進めていくことが、会社ひいては社会にとって重要だ」と力を込める。

ミニクリップ
 LGBT 性的少数者の頭文字を取った言葉。「L」はレズビアンで、同性を好きになる女性。「G」はゲイで、同性を好きになる男性。「B」はバイセクシュアルで両性愛者。「T」はトランスジェンダーで、身体的な性と、性の自認が一致しない人。


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