街と人 なにわの夢

 大都市・大阪の街は時代とともに変化してきたが、そこには人々の暮らしが息づいてきた。今後、街の姿はさらに大きく変貌していくことが予想される。目に見える変化だけでなく、暮らしを取り巻く環境もまた同じだ。街と人に焦点を当て、令和時代の変わりゆく大阪を見つめる。

第3部「多様性」(2)特別支援教育の推進

2020年7月25日

共に学び、共に育つ

男子児童が作った喫茶店をイメージした工作物を見る片山校長=大阪市住之江区の住之江小

 障害のある子どもの学びはどのような形がいいのか。国は共生社会に向けて「インクルーシブ教育システム」の理念が重要だとし、その構築のためには特別支援教育を着実に進めることが大切だとする。

■居場所がある

 大阪市住之江区の市立住之江小学校。全校児童は253人おり、特別支援学級は5学級が設置されて25人が学んでいる。

 特別支援学級のある男子児童はコーヒーに興味がある。担当の教員はこうした興味もきめ細かく受け止める。教員が自宅からコーヒー豆と焙煎(ばいせん)の道具を持参し、児童は安全に配慮した上で焙煎を体験。色や香りを観察すると、「ええ匂いやな」と感想を言っていたという。

 授業の一環として、段ボールを材料に使って喫茶店やカプセルホテルに見立てた大きな工作物を作り、街を再現した。通常学級の子どもが見に来て、「これは何?」と聞いたり、男子児童も通常学級で共に学んだりすることがある。

 教員は「どの子どもにも居場所があるのが学校。(交流によって)居場所があると思えるし、周囲の子どもも『違い』を認めることができるようになる」と話す。

 文科相の諮問機関である中央教育審議会の初等中等教育分科会が、2012年に取りまとめた報告によると、インクルーシブ教育システムは、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある子どもに柔軟な仕組みを整備することが重要だと指摘している。

 小学校・中学校での通常の学級や通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある「多様な学びの場」を用意するよう提言している。

■周囲の工夫で

 大阪市は、地域で「共に学び、共に育ち、共に生きる」ことを掲げ、地域の小学校や中学校で学ぶことを基本に取り組みを展開。障害のある子どもの進学先を決める際は、本人や保護者の意向を尊重している。

 20年度の小学校での特別支援学級の設置校数は286校で、ほぼ全ての小学校に設置され、在籍児童は7644人。中学校も127校とほぼ全てに設置され、在籍生徒は2707人になる。

 同市は小学校や中学校に「特別支援教育サポーター」を配置し、個別の支援が必要な児童や生徒の学習補助などを進めている。特別支援教育に関して専門性の高い「インクルーシブ教育推進スタッフ」は、小学校9校、中学校5校の拠点校に配置して対応。

 住之江小学校の片山雅之校長は「障害は『障壁』ではなく、周囲の工夫で普通に生活を送ることができる。子どもは自信をつければ一歩を踏み出していく」と見据える。

ミニクリップ
 インクルーシブ教育システム 障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組み。障害のある者が教育制度一般から排除されず、生活する地域で初等・中等教育の機会が得られること。個人に必要な「合理的配慮」が提供されることが必要とされている。


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