街と人 なにわの夢

 大都市・大阪の街は時代とともに変化してきたが、そこには人々の暮らしが息づいてきた。今後、街の姿はさらに大きく変貌していくことが予想される。目に見える変化だけでなく、暮らしを取り巻く環境もまた同じだ。街と人に焦点を当て、令和時代の変わりゆく大阪を見つめる。

第4部「変革に挑む」(上)「大阪のカタチ」

2020年11月29日

都構想否決後の未来は

大阪市北区にある市役所庁舎。都構想は否決されたが自治体制度を巡る議論は続く

 「広域機能の一元化と基礎自治機能の拡充について、来年2月に提案できるよう具体的な内容の検討を進めたい」。大阪市の松井一郎市長は今月26日の市議会で、「総合区制度」と「府への広域行政一元化」の条例案を、2月議会に提出する方針を改めて示した。

 市を廃止し、特別区を設置する「大阪都構想」は住民投票で否決されたものの、条例によって都構想の理念の実現を図りたい考えだ。一方で、政令市を強化する「特別自治市」を目指す動きもある。大都市の形を巡る議論は収束する気配がない。

■実現に温度差

 総合区は以前、公明党が都構想の対案として、現行の24行政区を8総合区に再編する案を主張していた経緯がある。松井市長は公明から要望があれば協力するという姿勢だったが、自ら提案する方針に変更。府市でつくる副首都推進局が作成した総合区案を、大きな修正をせずに議会に提出する意向だ。

 都構想の実現には住民投票が必要だったが、総合区は市議会の可決で済む。都構想推進派だった大阪維新の会と公明党が賛成すれば条例は実現するが、「議論や市民への説明は当然必要」(公明党市議)と温度差はある。

 広域行政を一元化する条例についても、松井市長が「府と市がバラバラにならないルールが必要」とし、吉村洋文知事も「府市両議会に提案することになる」と足並みをそろえるが、具体的な制度設計はこれからだ。

■大都市の在り方

 一方で、全国20の政令市でつくる指定市市長会は、政令市の権限を強化する「特別自治市」など、多様な大都市制度の議論加速を求める提言を採択している。特別自治市実現に向けた専門チームも設置し、法整備に向けて国に働き掛ける方針だ。

 大阪市議会では、市の担当者が特別自治市を検討する意義を、第30次地方制度調査会答申から答弁している。「全ての都道府県、市町村の事務を処理することから、区域内においては『二重行政』が完全に解消され、大都市地域における高齢化や、社会資本の老朽化に備えた効率的な行政体制の整備に資する」などの点を挙げた。

 立命館大の森裕之教授(地方財政学)は、制度問題よりも「新型コロナウイルスの対策を優先すべきだ」とした上で、「総合区長は議会の承認が必要なため、間接的に民意が担保されてニアイズベターに近づくが、区長の権限強化は今の行政区でも可能。(8区案など)合区は全く別の話で、一つの区で始めて良ければ広げていくこともできる」と指摘。特別自治市については「大阪市には“母都市”としての働きがあり、府域全体の財政への影響を慎重にみないといけない」と話す。

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 新型コロナウイルスの感染急拡大で、医療崩壊も懸念される大阪。大阪都構想否決後の自治体制度の議論や、新型コロナ禍で変革に挑む住民や企業の動きから大阪の未来を探る。

ミニクリップ
 総合区 総合区制度は政令市に設けられる制度で、特別区と異なり、政令市自体は存続する。2014年の地方自治法改正で法制化されたが、実際に導入した政令市はない。総合区長は市議会の同意を得て市長が任命する特別職で、権限は一定強化されるが、特別区のような公選制ではない。


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