来阪catch

官民協同の新しい形

ドキュメンタリー映画 「プリズン・サークル」   
監督 坂上 香
2020年2月8日

受刑者が語り合う

「出演してくれた受刑者にも映画を見てほしい」と話す坂上香監督=大阪・十三の第七藝術劇場
「プリズン・サークル」の一場面(C)2019 Kaori Sakagami

 官民協同の新しい刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」にカメラを持ち込んで撮影されたドキュメンタリー映画「プリズン・サークル」(東風配給)が8日から大阪・十三の第七藝術劇場で公開される。受刑者同士で話し合う「TC」(回復共同体)というプログラムを取り入れた日本で唯一の刑務所。「多くの人に知ってほしい」という坂上香監督(55)に話を聞いた。

 1981年にアメリカのアリゾナ州トゥーソンで創設された「TC」は、薬物やアルコールなどの物質依存症を主な対象とし刑務所内外を拠点として始まった。坂上監督はピッツバーグ大で社会経済開発学の修士号を取得し南米を放浪した後、帰国後テレビドキュメンタリーの道に入った。アメリカの刑務所を舞台に撮った「ライファーズ 終身刑を超えて」(2004年)などを発表している。

 「私の映画を見た民間企業の方から『日本では官民協同でTCを取り入れた刑務所は作られないのか』という声をかけられた。日本は民間では利潤を上げなければ成立しないし、無理かと思うと答えたが、やがてすぐの08年に『島根あさひ』がそれを導入した。そのプログラムに参加させてもらって、TCがしっかり機能しているのを見て、これは映像に記録しないといけないと思った」

 それでも「撮影許可を得るのに6年、撮影に2年かかった」と振り返る。TCは臨床心理士ら民間の支援者が、受刑者と向きあって話をする。受刑者を番号ではなく名前を呼んで相対する。「その場には数人の刑務官が付いているが、それは撮影スタッフに対して警戒しているふうで、私は規則で受刑者たちに声をかけることはできず、イライラが募った」という状況。「それでも週に12時間というプログラムの時は、受刑者にとっては特別な時間でもあったようで、喜んでくれたのがうれしかった」

 「なぜ自分はここにいるのか」「いかにして償うのか」、そして幼い頃に体験した貧困、いじめ、虐待などの記憶もよみがえってくる。罪が詐欺と詐欺未遂の択也(22)、強盗致傷と窃盗などの真人(24)、傷害致死の翔(29)、他府県から来た強盗傷人の健太郎(27)の4人の会話が中心になる。「泣いたり、怒ったり、笑うときもある。初めにあった彼らの社会に対する違和感が、ほぐれる瞬間がある」

 映画は同所でプログラムを受けた受刑者が出所して外でサークルの会を開く模様も捉えている。新しい刑務所「島根あさひ」のこれからと、次のステップが見てみたい。



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