来阪catch

父親役に身を任せた

映画「いつくしみふかき」
主演 渡辺いっけい
監督 大山 晃一郎
2020年7月18日

水と火と土の匂い

「見終わって何か胸に残るものがあるといいと思う」と話す渡辺いっけい(左)と大山晃一郎監督=大阪市北区の梅田スカイビル
「いつくしみふかき」の渡辺いっけい(右)と遠山雄

 大阪出身の大山晃一郎監督(34)のデビュー作「いつくしみふかき」(渋谷プロダクション配給)が24日から、テアトル梅田で公開される。葬儀の場で息子が犯罪者だった父のことを謝罪したという実話の映画化。主演の渡辺いっけい(57)は「父親役に身を任せた」と言い、大山監督は「水と火と土の匂いがする作品にしたかった」と撮影を振り返る。

 映画のタイトルは教会の賛美歌から引用された。大山監督が映画とは別に演出をしている劇団チキンハートの主催者、遠山雄(36)が遭遇した友人の葬儀のエピソードが物語の基になっている。「その時、青年が犯罪者だった父のことをかばいながら謝罪をする姿が衝撃的だったという。これを映画にしたいと思い、助監督時代から付き合いのあるベテラン俳優の渡辺さんに声をかけた」と大山監督。

 「大山監督とは大阪芸大の先輩後輩でもあり、仲が良かったので映画の話はすぐに引き受けたが、この主人公が少し分からない男で泥棒をして村を追われ、妻と子を捨てるが、30年後に息子と再会し、どうなるかという話。テレビや舞台でやったことのない役で、ロードムービーのように、父・広志の役を作らずに撮影に入った。精神的に苦しかったが、男がどこへ行くかという楽しみもあった」と渡辺。

 母子家庭で育ち母親(平栗あつみ)とも合わない息子の進一(遠山雄)は村で「悪魔の子」と呼ばれることもあったが、なんと30年後、大人になった彼は協会の牧師の家で父と再会する。「渡辺さんがワンシーンごとに考えて、前後のシーンとバランスをとる。これまでの渡辺さんのようにスイッチを入れて演技するのではなく、いつの間にか役になりきっている。とても怖いくらいでした」と大山監督。

 「広志という男は、どこまで息子のことを思っているのか分からない。だから彼は変わるのか、変わらないのか。役に身を任せた感じで、ラストシーンまで突っ走った。後で自分の顔をみたら本当に怖い顔をしているので、照れくさくなった」と渡辺。

 ラストは父親が亡くなっての葬儀シーンで、大山監督は演劇的な演出で「父と息子を結びつけたかった」という。渡辺は「仲直りしたのか、溶け合わなかったのか。その辺は映画を見て考えてほしい。何かが胸に残る作品になったと思う」と笑顔で訴えた。長野県飯田市でロケが行われた。ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2019で観客賞にあたるゆうばりファンタランド賞を受賞している。



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