大人の社会見学

 大人にしか味わえない、大人だからこそ学びたい施設を行く−。それを「大人の社会見学」と呼ぶ。食品工場や伝統産業資料室、工業遺産など関西有数のスポットを写真に収めながら、地域との密着や歴史、魅力を取り上げていく。

大和川流域の日本遺産 (大阪府柏原市・奈良県三郷町)

2020年9月17日

龍田古道の地滑りと信仰の歴史

第4大和川橋梁(きょうりょう)をJR大和路線の列車が奈良方面(左手)から大阪方面へ渡る。手前が「亀岩」
古くから「風の神様」として親しまれる龍田大社
龍田大社境内にある万葉歌碑

 全国有数の地滑り地帯である大阪、奈良の府県境を流れる大和川にまつわるエピソードが今夏、文化庁の「日本遺産」に認定された。歴史的資源を生かそうと、所在地の柏原市と奈良県三郷町は協議会を設立し、積極的にPRへ取り組んでいくことになった。認定のテーマは「もう、すべらせない!!」。地元が誇る遺産を巡った。

 大阪市内から電車で30分ほど。中河内に位置する柏原市は有数のブドウの産地で、市中心部を延長68キロの1級河川、大和川が蛇行している。

◇たびたびの地滑り

 9月の中旬に差し掛かったが、“残暑”は厳しい。さしづめ、幹線道路である国道25号沿いに立つ気温計の表示は「29度」。大阪の都心からは3度ほど低めだが、少し歩くだけでワイシャツがぐっしょりぬれるのが分かる。

 大阪市も流域に含まれる大和川は、奈良県桜井市の笠置山地を水源とし、葛城山系と生駒山系の間を縫って大阪平野を流れ、大阪湾に注ぐ。氾濫と付け替えの歴史を繰り返しており、大阪、奈良の府県境にある峡谷は、たびたびの地滑りが住民を悩ませてきた。

◇壮大なストーリー

 この歴史に着目したのが地元自治体の柏原市と三郷町。「もう、すべらせない!!」は、地滑りと、古代から受け継がれてきた龍田古道をテーマとし、地理的な特徴や地滑りに伴う信仰の相まったストーリーが文化庁の評価を得た。タイトルも斬新だ。

 地元には、亀の瀬地滑りの歴史やメカニズム、対策工事の内容を紹介する資料館を備える。亀の瀬が心臓部に当たる龍田古道と、それとは切り離して語れない龍田大社の信仰を交えた逸話は壮大なストーリーで、1932年の地滑りで崩壊したと思われていた「れんが造り」の鉄道トンネル、旧大阪鉄道亀瀬隧道(ずいどう)が、日曜、祝日限定ながら見学できるのも興味深い。

 今月4日には、地域ブランド確立を目指そうと、日本遺産に共同申請した両市町と、商工会議所、国土交通省大和川河川事務所などで協議会を設立。本年度以降、観光ガイドの育成やマーケティング調査に取り組んでいく方針だ。

 協議会事務局を務める柏原市産業振興課の担当者は「土木遺産を観光資源として活用し、交流人口の増加につなげたい」と話している。

 日本遺産 文化庁が地域の歴史的魅力や特色を観光資源として活用するため認定する制度。城郭や社寺、祭り、伝統芸能など有形、無形の文化財で構成。認定されると多言語ホームページの作成や、観光ガイドの育成などの取り組みに国から財政支援を受けられる。本年度は21件が認められ、初年度の2015年以来、累計で計104件となった。大阪府内ではほかに「中世に出逢(あ)えるまち」(河内長野市)「中世日根荘の風景」(泉佐野市)などがある。


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