大人の社会見学

 大人にしか味わえない、大人だからこそ学びたい施設を行く−。それを「大人の社会見学」と呼ぶ。食品工場や伝統産業資料室、工業遺産など関西有数のスポットを写真に収めながら、地域との密着や歴史、魅力を取り上げていく。

大阪木津市場 (大阪市浪速区)

2020年12月17日

あらゆる食材一度で手に

2008〜10年に順次リニューアルし、現在の形になった大阪木津地方卸売市場
肉や魚介類、野菜など150店舗が軒を連ねる場内
場内の飲食店では、市場で買い付けた新鮮な素材を使った一品も味わうことができる

 民設市場として、“食いだおれ”のまちを支えてきた「大阪木津市場」。肉や魚に青果、総菜、練り物、漬物まで150の商店が軒を連ね、あらゆる食材が一度に手に入る、民間としては日本最大級の規模を誇る地方卸売市場だ。大正時代に起こった民間市場廃止の波、戦災に伴う一時廃場を乗り越え、300年の歴史を刻んできた。近年は大幅なリニューアルを果たし、一般向けに開放する「朝市」が人気に。活気漂う場内を巡った。

 「待ちいな、お兄さん。なんぼやったらええの」−。魚介類を品定めする買い物客に対し、店主が柔軟に価格交渉へ応じる。活気あふれる朝の一幕だ。

 大阪・ミナミにほど近く、大阪メトロ大国町駅からは徒歩3分。都会のど真ん中にある民設市場には、商店街や飲食関係者の買い付けだけでなく、一般開放しているのが特徴だ。

◇早起きしてでも

 大規模改装と時を同じくし、一般向けに「木津の朝市」を始めたのは今から12年前。月2回、競り体験や豪華賞品が当たる抽選会に参加できるツアーが受け、一度に1800人が集まる人気企画に成長した。

 競りではマグロやフグ、タイに肉類も俎上(そじょう)に乗り、来場者が楽しみながら安価で落札できる仕組みだ。「早起きしてでも行きたくなる!」とPRし、同市場協会事務長の野誠二さん(73)は「市場の人たちは熱い思いを持っている。全体に活気が生まれた」と目を見張る。

◇地場産をPR

 地方市場には、地場産物を流通させるという使命がある。鮮魚を取り扱う永田商店では、午前1時台から明かりがともり、タチウオやアコウなど大阪湾の下荘漁港(阪南市)で水揚げされた魚介がずらりと並ぶ。永田一茂社長(37)は「湾には栄養価の高い餌が豊富にある。大阪湾の魚の良さを伝えたい」と熱を込める。

 八百屋さんを営む丹喜丹井商店では、18ある「なにわの伝統野菜」の多くを旬ごとに取りそろえ、冬季は田辺大根や天王寺蕪(かぶら)などが登場。丹井宏代表(58)は「認知度を高め、近隣の人にも『ここにあって良かった』と思ってもらえる市場にしたい」と青写真を描く。

◇食の推進を

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、朝市は半年間の中断を経て、秋にようやく再開にこぎ着けた。回数を増やすなどして来場者の分散化を進めてきたものの、再拡大で来年1月中旬までの再中断を決めた。

 一方で、来年からは大阪観光局が提唱する「食のマイクロツーリズム」を進めていく考え。料理人や研究家とも協働し、食材や食べ方を知るツアーを計画しており、野さんは「朝市の12年間で培ったネットワークを生かしたい」と“コロナ後”を展望している。

 木津市場 正式名は大阪木津地方卸売市場、通称は大阪木津市場。ルーツは平安時代にあるとされ、朝廷お抱えの商人「供御人(みくりやくにん)」として主に魚介類を献上していたとも伝わる。原型となるのは約300年前に起こった野立ち売りで、1810(文化7)年に官許を得た。1938(昭和13)年に大国主神社の北西部から現在地へ移り、2010年にリニューアルオープンした。


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