トレンド特急便

北加賀屋にシェアアトリエ

2020年10月7日

アートと地域を「つなぐ場」目指す

1階は大型作品制作用のオープンスタジオで天井高は6メートル。2階の通路からも制作の様子を見ることができる
ホームページで公開されている360度カメラによる制作現場(SSK提供)

 アートによるまちづくりが進む大阪市住之江区北加賀屋で、アーティストやクリエーターのシェアアトリエ「Super Studio Kitakagaya(SSK)」が本格始動した。ホームページ(HP)には制作の様子やアーティストのインタビューを公開。現地での見学も可能で、アートと地域を結ぶ試みとなる。

 2009年から北加賀屋で「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想」を推進する不動産業「千島土地」(大阪市)の「おおさか創造千島財団」が運営。同構想では、産業遺産の名村造船所大阪工場跡地を中心に、空き物件をアトリエや美術品収蔵庫、ギャラリーなどに生まれ変わらせている。

■12人の多彩な顔ぶれ

 アーティストにとって、制作場所の確保は悩みの種。特に、大型作品を作るには搬入口や天井の高さ、騒音など周辺環境がハードルになる。その点、元倉庫の「SSK」は敷地面積は約650平方メートル、天井高は6メートル。工場街の立地を生かし、365日24時間の利用が可能だ。

 アトリエ内は、一区画約50平方メートルのラージスタジオが四つ、個室は約25平方メートルで9室。施設内はWi−Fi完備で溶接や木工作業ができる別棟、共用キッチンやシャワー、洗濯機の設備が整う。

 6月から入居が始まり、現在は彫刻や現代美術、絵画、映像まで多彩な顔ぶれ12人がそろう。賃料は光熱費込みで月3万円。破格の価格だが、アーティストを引きつけているのは、物的環境とともに精神的な環境だ。

 現代美術アーティストの笹原晃平さん(36)は、メリットに「隣人がいること」を上げる。これまでは“出張制作”と称して、固定のアトリエを持たなかった笹原さん。「作家やデザイナーなど自分と同じような悩みを持った人が近くにいる。天井の高さといった場所の得難さといい、いいバランス」と気に入っている。

■スタジオの映像公開

 「SSK」は、アーティストにとって最良の場所であるとともに、「地域とアートを結ぶ」使命がある。

 当初は、定期的にオープンスタジオを開き、制作の様子を見られるようにする予定だったが、新型コロナ禍のため開催を見合わせ。その代わりに、今月1日からHPでスタジオ内部を360度カメラで撮影した映像を公開している。「アートは興味がなくても、ものづくりの現場は見て楽しいもの」と同財団事務局長の木坂葵さん。制作風景や展示の様子のほか、アーティストのインタビュー映像もある。

 「(SSKを)街の一つとして見てくれるとうれしい」と笹原さん。シェアアトリエの誕生は、制作・展示・収蔵までが集約されたアートの街の大きな一歩となる。



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