2021年11月26日

松葉も親も"高値の花" カニ好き鳥取県民ため息

 冬の味覚「松葉ガニ」と庶民の味「親ガニ」。雌雄のズワイガニが、今年はどちらも高騰している。全国的に新型コロナウイルスの流行が落ち着き、旅館などの需要が高まったことが理由。カニを起爆剤に誘客を期待していた民宿や飲食店は悲鳴を上げ、カニ好きの県民はため息を漏らしている。

 「昨年からさらに高根の花になった。とても手を出せない」。鳥取市内のスーパーに買い物に来ていた70代女性は肩を落とす。「様子を見て、値段が落ちなければ、安い『若松葉』が販売されるまで待つ」と売り場を後にした。

■水揚げは順調

 県漁協によると、松葉ガニと親ガニは、ともに資源不足が予想されていたが、今年の水揚げ量は「昨年より多少少ないが、現状は順調」という。一方、昨シーズンに過去最高単価を記録した松葉ガニは、今年は前年比で1・5倍以上とさらに高値で推移。親ガニの高騰も前年から続いている。

 水揚げは資源不足ながらも順調。ではなぜ、単価が高いのか。エスマート(鳥取市)の川田浩水産課長(56)は「コロナが落ち着き、県内外から引き合いが強まっている。安価な海外産の冷凍ガニが不漁で入ってこないことも影響している」と推測する。

 同社の仕入れ値は、親ガニが過去最高だった前年の1・3倍、松葉ガニは同2倍に。同社は親ガニを昨年を下回る価格で販売していたが、昨年並みに戻すといい、「無理をしていたが厳しい。本当はもう少し上げたいが…」と頭を悩ます。

■サービス状態

 カニの高騰は冬の味覚でコロナ禍の巻き返しを考えていた宿や飲食店を直撃。松葉ガニの漁獲量日本一の岩美町内の民宿「シーサイドうらどめ」の油浅直文社長(56)は「上がるとは聞いていたが、予想以上」と眉をひそめている。

 この時季は例年、観光客の9割が松葉ガニのコースを注文していたが、今年はメニューを千~2千円値上げ。「もともと、ぎりぎりの価格設定をしている。現状では原価が値上げした額をも上回り、サービスで料理を出している状態」と苦笑いする。

 境港に水揚げされたカニの料理を提供する境港市京町の「味処美佐」も松葉ガニ目当ての予約でいっぱいだが、浜野政和代表(46)の表情は明るくない。「想定の倍の値段。コロナで落ち込んだ分をカニで挽回しようと思っていたのに、コロナ融資で借りた分の返済計画も狂ってしまう」と悲鳴を上げている。

 浜野代表はカニの価格が高騰する12月への警戒感をあらわにし、「11月は活ガニでの店の取り分はほとんどない。燃油高騰や県外から引き合いが強い影響を、地元の飲食店がもろに受けている」と苦境を語った。(西田周平、井上昌之)

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