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野分 大阪発・論点 大阪から野分(台風)を起こします
2018/9/14

台風で関空麻痺 大阪空港国際線 地元の思惑

 台風21号の直撃で関西空港は機能麻痺(まひ)。普段は中国などの観光客でにぎわう黒門市場も閑古鳥。訪日外国人の激減で関西経済は青息吐息ですが、全面復旧はいつになるやら。そこで松井大阪府知事と和泉首相補佐官が面会し、大阪国際(伊丹)空港と神戸空港に国際線の一部を振り替える案が急浮上。大阪空港周辺10市による協議会は12日、「関西や日本経済への影響が大きい」として受け入れを表明しました。

 ただしこれは臨時措置で、終了期限を示すよう求め、運用時間を午後10時まで1時間延ばすという要請は、騒音などを理由に認めませんでした。国難だから仕方なく…という訳ですが、3年前にこの地域の取材を担当した際お世話になった複数の関係者と話すと、別の思惑が見えてきました。

   ◇   ◇   

 そもそもこの空港は、正式名称に「国際」とあるのに国際線がない、世界でもまれな空港です。廃止を前提に関空を造ったのに、途中で地元が方針転換して存続を言い出し、国も国内線の基幹空港と位置付けて国内線は残ったけれども、国際線はすべて関空に移った。以来、国際線誘致は地元政財界の悲願ですが、関空のある泉州地域の反発もあり実現しなかった。それがこの台風の余波で24年ぶりに復活する…これを臨時措置で終わらせられるはずがないというのです。

 関空が全面復旧しても大阪空港に国際線を残したいというのが偽らざる気持ちだと。夜間の時間延長は認めませんでしたが「着陸が夜9時に間に合わない遅延便が出たら受け入れる」ことになりました。今でも遅延が結構あるのに増便すればさらに続出するでしょう。そうなれば事実上、運用時間を延ばしたも同然だし、東日本大震災で1時間延長した実績があるのだから延長を認めようという流れになるという訳です。

 大阪北部や兵庫の利用者からすると、大阪空港や神戸空港に国際線があった方が便利なのは確かです。運用時間だって少しでも延びた方が、時間切れで関空着陸を余儀なくされることもなく、利用者にとっても航空会社にとってもありがたい話です。関空は開港から24年がたっても地盤沈下がおさまらず、台風の高潮で滑走路が冠水。唯一のアクセスである連絡橋もタンカー衝突でアウト。こうした災害時のリスクを分散するため、大阪と神戸に国際線を一部振り替えるのは危機管理上も理にかなっているという主張です。

 国際線を飛ばすには、CIQ(税関・出入国管理・検疫)とそのための設備が必要です。今はそれがないから、準備ができるまで国際線を飛ばせない。しかし定期便があればCIQが常設されるから、関空に何かあった時は即座に受け入れることができます。

 騒音問題など、解決すべき課題はいくつもあります。泉州では「関空は国際線の基幹空港だから一日も早く全面復旧を」と、国際線振り替えをけん制するような発言も出ています。大阪空港国際線の行方を注視したいと思います。

 ここからは私見ですが大阪空港が「伊丹空港」と呼ばれることに違和感があります。あの空港は滑走路の大部分が兵庫県伊丹市にありますが、利用者が出入りするターミナルビルは大阪府側(豊中市・池田市)で、伊丹側に入り口はありません。ですから、正式名称を縮めて「大阪空港」と呼ぶのがふさわしい、というのは大阪愛が過ぎる発言でしょうか?

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 今回の話は森友事件とは無関係ですが、学園に格安で売られたあの国有地は、もともと空港の騒音対策として国が住民から買い取ったものです。あそこでインタビューをすると上空を飛行機がひっきりなしに降りてきて轟音(ごうおん)に邪魔されました。次回は来週、森友事件のことを書きます。(大阪日日新聞 論説委員・記者 相沢冬樹)

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