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野分 大阪発・論点 大阪から野分(台風)を起こします
2018/10/25

ホンダ訴訟で中間判決 ガソリン漏れの責任有無が次の焦点に

 大手自動車メーカー「ホンダ」の車がガソリン漏れを起こしたため、火事が起きて娘が亡くなった。そう訴えて母親が起こした裁判が、26日、中間判決を迎えます。中間判決とは、争点がいくつかに渡る際、まず最初の争点についていったん判決を出した上で、次の争点について審理を行うという手続きです。中間判決も事前に結論がわかるものではありませんが、今回はある特殊事情で、ホンダの主張が退けられる可能性があるとみられています。その特殊事情と、ホンダのどういう点について責任が問われているのかをご紹介します。

   ◇   ◇

 裁判を起こしているのは青木惠子さん。このお名前に見覚えはありませんか? 23年前、大阪市東住吉区の住宅から火が出て、当時11歳だった青木めぐみさんが亡くなる火事がありました。この火事をめぐり、内縁の夫と共謀して保険金目的で放火し娘を殺害したとして警察に逮捕され、殺人罪などで無期懲役の判決が確定したのが、青木惠子さんです。

 娘殺しの母親の名を着せられた青木さんは一貫して無実を訴え続けました。そして弁護団の執念の実験で、自白通りの方法では放火はできないことが立証され、再審(やり直しの裁判)で無罪を勝ち取りました。東住吉冤罪(えんざい)事件として広く知られる事件です。

 放火ではないとすれば、火事はなぜ起きたのでしょう? 弁護団はこれについても調査を進めました。その結果、青木さんの自宅の車庫にあったホンダの軽ワゴン車が給油口からガソリン漏れを起こし、そこに風呂釜の火が引火した可能性があることを突き止めたのです。シャシーが共通のほぼ同型の軽トラックが各地でガソリン漏れを起こしていることもわかりました。これが火事の原因となった可能性は、再審の刑事裁判でも認定されています。

 ところがホンダは、ほぼ同型の車がガソリン漏れを起こしている事実は認めながら、それはユーザーの使い方が誤っているからで、自社に責任はないとしています。納得のいかない青木さんは去年1月、裁判を起こしました。これに対しホンダは、火事から20年以上がたっているから、「除斥」という規定で裁判を起こすことはできないと主張しています。

 しかし青木さんは無実の罪で20年間獄中にいた上、娘を殺害したとされて娘の被害の相続権がなかったのです。弁護団はこう主張し、除斥を適用しないよう求めてきました。ホンダは除斥の適用を求めるばかりで、肝心のガソリン漏れの責任の有無については主張していません。裁判長に促されても主張しないため、中間判決でまず除斥について結論を出すことになりました。

 中間判決ということは、裁判はまだ続くわけです。もし除斥を認めれば、そこで裁判は終わります。裁判が続くということは、除斥を認めないという結論しか論理上ありえません。つまりホンダの主張は退けられて、裁判はいよいよ車のガソリン漏れの責任に焦点が移ることになります。もっとも裁判所は「終局判決になるかもしれない」とも言っていますので、現状では「可能性」にとどまります。

 類似のガソリン漏れはトヨタや日産の車でも起きています。ですがこの2社はすでにリコールを届け出て修理対応をしています。ホンダはリコールしていません。この裁判は青木さんだけの問題ではなく、すべてのホンダユーザーにとっても関心の高いものとなりそうです。(大阪日日新聞 論説委員・記者 相沢冬樹)

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