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【 ビル・トッテン 】
 日本初のパッケージ・ソフトウエア販売会社「アシスト」代表取締役。1941年米国カリフォルニア州ロングビーチ生まれ。69年、SDC社員として日本の市場調査のため初来日。同社退社後の72年に再来日、資本金100万円、社員7人でアシスト社設立、現在に至る。『アングロサクソンは人間を不幸にする』(PHP研究所)など著書多数。テレビ出演や講演なども精力的にこなす。




  社内公用語が英語の企業

2010/09/02

 有名な日本企業が社内の公用語を英語にすると発表した、ということが話題になり、それについて英語圏出身の経営者である私はコメントを求められた。

 日本で起業し、日本人を雇用して一緒に働き、日本の企業やお客さまに製品を売るのが商売であるわが社では、私がアメリカ人(だった)とはいえ、社内の公用語を英語にする理由はまったくなかったし、これからもない。むしろ私が日本語を必死に学ぶことなく英語だけを使い続け、英語のできる社員だけを雇っていたら、38年間も日本で商売を続けることはできなかっただろう。

 だからといって、英語を公用語にすると決めた会社の方針がおかしいとは思わない。優秀な経営者が自社の製品、ビジネス、市場をよく分析した上で行った決断である。部外者があれこれ批判するのは簡単だ。だがこれほど大きな決断を下すまでに、さまざまな方向から議論、熟考を経営陣がしたことは間違いない。

立ち位置が世界なら

 企業の立ち位置を日本から世界へ移すために、社員の思考の基盤ともなる言語から変えるというのは、例えば北米に工場を造り、そこに英語のできる日本人社員を派遣する、と同じような意味がある。日本語しかできなければ現地社員と意思の疎通は難しい。私が日本に来た当初も日々、日本語との格闘だったことを思い出す。

 また、舞台がグローバルになれば競争相手もグローバルとなる。安価な労働力を使ってコスト削減をしたり簡単にリストラをする多国籍企業を相手に戦わなければならなくなる。

新しい面白い組織に

 まずは社内公用語を英語にする、そして社員が会社でずっと働きたいと思うのであれば必死に英語を学びなさいというチャンスを与えることは、突然拠点をインドに移転し、同時に本国の社員を大量リストラするよりもずっと良心的である。

 同じ会社で働き続けたい社員なら必死に英語を学ぶだろう。社員にとっては大変なことだし、すぐに結果は出ないかもしれないが、長期的に英語という企業文化が根付けば、日本企業という枠組みに縛(しば)られない、新しい、面白い組織となるに違いない。

 しかし、これは日本企業の大部分を占める中小企業、つまり日本労働者の多くには関係のないことである。なぜならほとんどの会社は、わが社と同じように日本人を雇用し、日本人相手に商売をしているからである。

徐々にローカルへ

 また私は、過去十数年間に急速に進んだグローバル化は、これから徐々にローカルへと揺り戻される方向にあるとみている。

 グローバル化によって、世界における北と南、また一つの国における格差はあまりにも拡大した。国境を越えた富は均等に人々を潤すのではなく、一握りの人々の手に渡ってしまった。アメリカでは、製造業から始まったグローバル化がサービス業にまで拡大し、労働者はインドや上海の労働者と職を競い合わなければならず、失業率上昇に歯止めがかからなくなっている。

 雇用が流出し続けているアメリカのようにならないためにも、私は日本人経営者として、これからも日本語を使い、製品やサービス、そして雇用を提供していきたいと思っている。

 (アシスト代表取締役)
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