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【 賀茂川耕助 】



富裕層の租税回避行為

2017/12/7

 2016年、「パナマ文書」と呼ばれる機密文書が流出した。租税回避地への法人設立を代行するパナマの法律事務所から、富裕層や権力者たちが節税目的のために租税回避行為をしているとして「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)がそれを公表し、世界中で報道されたのである。

 2017年10月にはパナマ文書をもとに、マルタ首相の妻らが資産隠しをしていたとの疑惑を指摘していたマルタの女性ジャーナリストが車を爆破されて死亡する事件が起き、11月には「パナマ文書」に続く新たな租税回避情報が漏えいされた。

■「パラダイス文書」

 英領バミューダ諸島の法律事務所アップルビーから流出した文書は、大西洋の楽園の島にちなんで「パラダイス文書」と名付けられ、パナマ文書同様、ICIJを通して公表された。エリザベス女王からトランプ政権の政治家、多国籍企業など、世界の富裕層が租税回避地を利用していることが再び一般メディアで報じられたのである。

 今回の流出元となったアップルビーは、バミューダ諸島やケイマン諸島などの租税回避地に拠点を構える法律事務所で、世界の富豪や多国籍企業の依頼を受けてペーパーカンパニーなどを設立する。その事務所がハッキングを受け内部文書が流出したのだった。

 租税回避行為自体は違法ではない。問題は、英国エリザベス女王がその個人資産を租税回避地であるケイマン諸島のファンドに投資したと、ICIJに参加する英BBCが報じたように、イギリス王室は所有する資産運用で運営費を賄っているが、租税回避によって女王は国への税金の支払いを逃れられるということだ。一握りの富裕層は法律事務所を使ってバミューダ諸島などのオフショア企業を経由して合法的に節税ができること、それ自体が問題なのである。

■ファンド通じ投資

 パラダイス文書によりトランプ政権の商務長官が、アメリカが制裁の対象としているロシアの、プーチン大統領の娘婿が共同経営者である海運会社と巨額の取引を行っていたことが発覚したし、米大統領選挙でロシアがフェイクニュースによる情報操作で影響を与えたと問題になったが、そのロシア政府系の銀行や企業の資金が、米ツイッター社やフェイスブック社にファンドを通じて投資されていたこともICIJの取材で分かっている。

 またカナダでは租税回避地を利用した税逃れを批判したトルドー首相の顧問が、ケイマン諸島の信託会社に巨額の資金を移して運用していたことも暴露されたし、ナイキやアップルといった多国籍企業も税金のかからないバミューダの子会社に利益を流すことでアメリカでの法人税支払いを回避していたという。

 日本政府は「パナマ文書」発覚の際も調査は行わないとし、メディアもいつのまにか報道を止めた。しかし納税逃れは日本の税収不足の原因であることは間違いなく、「パラダイス文書」とも併せて国税当局による詳細な調査が求められる。富裕層や大企業の税金逃れを合法にしておきながら、法人税減税、消費税増税はないだろう。(評論家)
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