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【 賀茂川耕助 】



日本社会むしばむ税制

2017/6/22

 6月に入り、郵便料金や食料品などの生活関連商品やサービスの値上げが相次いでいる。改正酒税法により酒類の安売り規制も強化され、電力と都市ガスも燃料価格の上昇を背景に6月から値上げとなった。  家計の方は、総務省が発表した4月の家計調査によると、2人以上世帯の消費支出は1世帯当たり29万5929円で、物価変動を除いた実質では前年同月比1・4%減と14カ月連続で減少している。また勤労者(サラリーマン)の1世帯当たりの消費支出も同2・9%減少した。  一方、求職者1人に対して何件の求人があるかを示す「有効求人倍率」は、バブルだった1990年7月を上回る1・48倍となり、当時よりも人手不足だという。したがって完全失業者も減少傾向が続き、4月の完全失業率は2・8%と、国際的に見れば「完全雇用状態」を示す数字となっている。

雇用環境好転か

 統計上は、失業者が少なくて仕事はたくさんあり、明らかに雇用環境は好転している。しかし問題は、増えている雇用は非正規やパートであり、正社員の求人が中心だったバブルの頃とは賃金水準で大きな違いがあることだ。賃金が伸びなければ消費は増えず、景気の回復などありえないのである。  内部留保にいそしみながら労働者の賃金を上げない企業が、あたかも不景気の元凶のようにも言われているが、バブル期と現在との大きな違いは消費税である。1989年4月に3%の消費税が導入され、97年4月に5%に増税された。そして2014年4月には8%になった消費税が日本の「失われた20年、25年」の原因なのである。つまり、ごく一部の富裕層を優遇し、日本の消費の大部分を担っている中流層と低所得層の負担を増やした税制が日本社会をむしばんできた。  消費税は社会保障のために使うとして導入されたが、実際には大企業の法人税減税、所得税減税の補填(ほてん)のために使われている。所得の多い人を減税すれば消費が増え、社会全体の景気がよくなるという主張が間違っていたことは、これまでの25年間の実験によってわかったはずである。つまり、いくら富裕層を減税しても景気はよくならない。

金融取引税議論を

 消費税を廃止するとしたら、どこから税金を徴収するのか。所得格差をなくすために、最もよいのは株の売買に課税する株式売買税や外国為替取引に課税する外国為替取引税であろう。実際米国でも、08年の経済危機以来、金融取引税は単なる懐疑的なアイデアではなく、主流において議論すべき政策となっている。日本政府が公共支出のためにより多くの税金を徴収したいのであれば、金融取引税はかなり期待ができる方法である。  この種の金融取引税が施行されるには、大きな闘いに直面しなければならないだろう。なぜなら自分たちの特権を捨て、一般国民に益をもたらす制度を望まない裕福な人々の抵抗は大きいからだ。しかし国民の衣食住に必要な消費に課税するのと、過去に発行された企業株式の売買に課税するのと、どちらが望ましいか、その答えは明らかだろう。(評論家)
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