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【 賀茂川耕助 】



飛躍的地位拡大のアマゾン

2018/5/24

 米国の小売業界はここ数年、高い閉店率と破産率を記録し続けているが、原因の一つはオンラインショッピングの台頭にあると言われている。中でも1995年に書籍通販事業から始まったアマゾンは、今や世界40カ国以上を市場とし、条件が合えば注文の翌日に商品を入手できるというサービスを提供している。米国ではアパレル業界でも飛躍的に地位を拡大し、アマゾンに売り上げを奪われた全米最大の小売業者だったシアーズやメイシーズなどの百貨店は店舗の閉鎖やリストラを余儀なくされている。

■酷使される従業員

 そんなアマゾンについて、去る4月、英タブロイド紙「ザ・サン」は、アマゾンが極限まで効率を上げようと、物流センターにおいて酷使される従業員の最新状況を報じた。イギリスのある物流センターでは休憩時間が厳密に管理され、一定時間にどれくらい商品を取ってこられるかを監視しているため、トイレ休憩を取ることを恐れて空き瓶の中におしっこをした従業員がいるという。

 トイレが作業場から遠く、用を足す必要があるのに無駄な時間を取っているとして罰せられ、職を失うかもという恐怖の中で働いているためそのような行動になったという。アマゾンの広報担当者は、トイレはすぐそばにあり、良い賃金と手当を提供し、アマゾンは人気の高い職場であると反論し、記事の内容を否定している。

 商品を顧客に早く届けるためにアマゾンが従業員を酷使していることを最初に報じたのは2012年、シアトルタイムズだった。その後、英BBCの記者が派遣社員として物流センターで荷物を集める「ピッカー」として潜入取材を行い、従業員たちが大きなプレッシャーのもと過酷な労働を課せられていることをリポートした。

■「密告」する仕組み

 2015年にはアマゾン本社においても社員同士を監視させ、遅刻したりランチタイムを長く取っている同僚を「密告」する仕組みによって給料カットや解雇もあり、長時間労働を好み、休暇は取らず、仕事量にも内容にも一切文句を言わないのがアマゾンの「優れた従業員」だ、という記事をニューヨーク・タイムズが掲載している。

 アマゾンが全世界で約56万人を雇用し、CEOのジェフ・ベゾス氏は世界一の富豪で保有資産1120億ドル(約11兆8千億円)という事実は、米国の歴史を振り返れば目新しいことではない。北米先住民族を奴隷にし、次にアフリカ大陸から黒人を輸入して働かせ、第1次大戦頃までは鉱山や工場で児童労働は当たり前だった。カーネギー、ロックフェラー、グールドといった工業資本家は「泥棒男爵」と呼ばれ、巨大な富と権力で労働者を搾取し、近年企業は低賃金労働者のいる海外へ生産拠点を移してきた。

 しかしアマゾンの従業員はひどい待遇を嘆き続ける必要はない。なぜなら2030年にはそれらの仕事の多くがロボットにとって代わるとみられているためだ。それが資本家と企業経営者が最ももうかる方法なのである。労働者はむしろ、仕事がある間は給料をもらって雇われているという事実に感謝するべきなのかもしれない。(評論家)

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