大阪の川を美しく
−第56回水都祭企画−


川から誕生した大阪 <1><2>、<3>
潤いある水都へ <1><2><3>
川は生活とともに <1><2><3>
エコで川は変わる <1><2><3>
水都再生を目指して <1><2><3>


エコで川は変わる<2>

おいしい水を求めて

水資源開発のイラスト図
 大阪の水がおいしくなった−。大阪市の水道水が一昨年春から全市域に供給を始めた高度浄水処理水によって約半世紀前の水質に生まれ変わった。市政モニターのアンケートで半数以上が「おいしくなった」と評価しているが、「直接飲む」はまだ二割どまり。琵琶湖水系を水源にもつ大阪市のおいしい水を追い求める「水道第二世紀OSAKA」キャンペーンの現状をまとめた。


淀川あっての水道

水質保全へスクラム

水道資源−淀川

 大阪市の水道資源は、すべて淀川に依存している。淀川は桂川、宇治川、木津川が合流し、大沢平野を通って大阪湾へそそぐ国内有数の大河川。とりわけ、宇治川上流に位置する琵琶湖は日本最大の湖沼で、淀川の流量の調節に大きな役割を果たしている。

 大阪市の水資源の開発は一九四三年着工の「淀川河水統制第一期事業」に始まり、六四年に完成した長柄可動ぜき(現在の淀川大ぜき)の改築、六九年完成の高山ダム、七〇年完成の青蓮寺ダムの建設、七二年完成の正蓮寺川利水事業などの水資源開発事業に参画して、毎秒二三・四九一立方メートル(一日当たり約二〇三万立方メートル)の水利権を取得した。さらに七二年度に参画した琵琶湖開発事業では九一年度末に施設が完成、新たに毎秒七・四八五立方メートル(一日当たり約二六七万立方メートル)の水利権を得て現在、大阪市の水利権量は合計、毎秒三〇・九七六立方メートルを確保している。

水質の変遷と保全

 淀川水系は、上流に国内最大規模の琵琶湖をもつために河川の流量は安定し、恵まれている。

 ただ、上・中流域には京都市を含む大小の都市が位置し、都市排水等が淀川水系に流入するため、下流で取水する水道事業体にとって淀川水系の水質保全は不可欠だ。「有機性汚濁指標であるBOD(生物化学的酸素要求量)は五五年から六五年にかけては高い数値だったが、上、中流域の下水道整備などで現在はかなり減少している。また、アンモニア性窒素についても同年代にかけて増加したが、最近ではその濃度も減少している」(田中勉水質試験所研究副主幹)という。

 また、水道事業体(大阪府、大阪市、守口市、枚方市、寝屋川市、吹田市、尼崎市、伊丹市、西宮市、阪神水道企業団)は「淀川水質協議会」を結成して、水源水質保全のための活動を積極的に行っている。

 さらに、九三年九月には、淀川水系に位置する近畿二府四県三政令市(京都府、大阪府、三重県、滋賀県、奈良県、兵庫県、京都市、大阪市、神戸市)で「財団法人琵琶湖・淀川水質保全機構」を設立。同機構では、淀川水系の河川、湖沼水の水質浄化技術に関する研究開発などを目的に各種事業を行っている。

大阪市の浄水施設

 浄水場は淀川の水をきれいな飲み水にする“水の製造工場”。大阪市が運営する浄水場は柴島浄水場(大阪市東淀川区柴島)、庭窪浄水場(守口市)、豊野浄水場(寝屋川市)の三施設。

 柴島浄水場は、大阪市の浄水場では一番古く、一九一四年に誕生、当時は「東洋一の給水能力」と言われた。現在の一日標準給水能力(一日に送り出すことができる水の量)は一一八万立方メートル。庭窪浄水場は二番目に古く、五七年に誕生。現在の給水能力は八〇万立方メートル。豊野浄水場は六八年に誕生、四五万立方メートルの給水能力がある。

震災対策の強化

 大阪市は九六年三月、「大阪市水道・震災対策強化プラン21(基本構想)」を取りまとめた。

 施策体系は(1)取水場、浄水場など基幹施設の耐震強化(2)給・配水拠点、ネットワークの整備(3)配水系統間の相互融通性の向上(4)停電対策(5)資材保有体制の拡充(6)人工島への安定給水ルートの確保(7)情報通信システムの信頼性の強化(8)地震対策にかかるヘッドクォーター施設の耐震性強化−の八基本施策。

 橋本柴島浄水場運転係長は「特に震災後三日間は飲料水、医療用水など生命維持のための必要最低限の水を確保することが大切」と話している。


汚濁物質に厳しい目

大阪市水道局水質試験所・田中勉研究副主幹

水質試験所
の田中勉研
究副主幹
水質試験を行う所員
 −近畿の人々は、昔から琵琶湖・淀川水系の水を利用してきましたが。

 「今では、多くのダムや浄水場がありますが、琵琶湖・淀川水系が私たちの暮らしを支えていることは、今も昔も変わりありません。人は水なしでは生きられません。私たちは、この大切な命の源、琵琶湖・淀川水系の水をまず守り続けねばなりません」

 −現在の水質は。

 「淀川の水質は、BOD(生物化学的酸素要求量)やアンモニア性窒素などの水の汚れを表す指標をみると、法規制の強化や上、中流域での下水道整備などの水質保全対策の進展で改善されてきています。ただ、琵琶湖におけるカビ臭発生の問題は、昭和五十六年以降、毎年のように淀川下流に影響を及ぼしています。水質保全対策の実施とともに、水を汚さないという私たち一人ひとりの心がけが必要と思います」

 −水質試験所ではどのような検査をしていますか。

 「水源である琵琶湖・淀川の水質検査をはじめ、事業所の排水、浄水場の水をつくる浄水処理過程での水質試験をくりかえし、水に含まれている汚濁物質に厳しい目を光らせています。また、市内給水詮(せん)の水道水の水質検査、新しく敷設された水道管の使用前の水質検査、水道で使用する薬品類の品質検査など安全な水づくりに万全を期しています」

 −具体的な水質の試験内容は。

 「理化学実験、微生物・生物試験など科学的方法で水質のチェックをしています。また、浄水場で厳しく検査されて送り出された水は、さらに市内に設けられた三十八カ所の遠隔監視システムによって二十四時間体制で水質を連続監視しています。安心してどんどん水道水を飲んでください」


カビ臭、毒物を徹底除去

大阪市水道局柴島浄水場・橋本美和運転係長

高度浄水処理フロー
を使ってシステムを
説明する柴島浄水場
の橋本美和運転係長
 −水道水をまずいと感じる大きな要因の一つがカビ臭といわれていますが。

 「大阪市の水道でまずさの元凶・カビ臭が問題となったのは、昭和四十年代後半で五十六年以降は恒常的になっています。原因は主水源となる琵琶湖で発生した、カビ臭を出す植物性プランクトンです」

 −より安全で良質な水を求めて「高度浄水処理」施設ができたわけですね。

 「カビ臭に加え、浄水場で使用される塩素と原水中の有機物とが反応してできるトリハロメタンなどを低減するために、これまでの凝(ぎょう)集沈でん、急速砂ろ過処理を主体とする浄水処理方法にオゾンと粒状活性炭による処理工程を加えたのが『高度浄水処理』のシステムです。一昨年の三月三十日から大阪市全域で実施しています」

 −仕組みはどのようになっているのですか。

 「粒状活性炭は砂粒ほどの大きさで、小さな孔(あな)がたくさんあります。そこで水の中に溶けているカビ臭の原因となる有機物質やトリハロメタンの原因となる物質などは、その孔の中に吸着されます。活性炭の表面に付着した微生物も分解されて取り除かれます。オゾンは酸素原子が三つ集まってできた強い酸化力のある物質で、カビ臭の原因となる有機物質などを分解除去する効果があります。また、水中のマンガンの酸化や水の消毒にも役立ちます」

 −水質はどう変わるのですか。

 「高度浄水処理には三つの特長があります。完全にカビ臭を取り除くことができ、塩素臭の原因となっている有機物等も減少するため、カルキ臭が気にならない水道水となっています。トリハロメタンも年平均で基準値の十分の一以下となっています。また、塩素消毒で微生物のクリプトスポリジウムに対してもオゾンは強い消毒力をもっています。蛇口から直接、おいしくなった大阪の水道水を飲んでください」