大阪発 羅針盤

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入浴客のタトゥー 外国人客へどう対応

2016年5月4日
子どもの名前のタトゥーを入れている米国人男性。タトゥーに対する日本人の意識について「外国人との間に壁をつくっている」と語る。

 訪日外国人が増加する中、入浴・温泉宿泊施設では、タトゥー(入れ墨)をしている外国人客の対応に迫られている。観光庁は、シールを貼って入浴をお願いするなどの「対応事例」をまとめ、一律に排除しないよう業界団体に要請。しかし、日本ではタトゥーに威圧感を覚える人は少なくなく、「お断り」の施設は多い。年間700万人以上の外国人が訪れる大阪も、手探りの対応が続く。

 外国では、ファッションや宗教的な理由でタトゥーを入れるケースも多い。しかし日本では「入れ墨=暴力団」のイメージが強く、業界は自主規制している。観光庁は3月、タトゥーをした外国人の入浴に関する対応事例を全国の宿泊・入浴施設に周知し、受け入れ体制の改善を促した。

 大阪府によると、2015年の来阪外国人は、14年比約90%増の716万人(速報値)。入浴・温泉施設は、体験型観光スポットとして外国人にも人気が高い。

■困惑と期待

 「収拾がつかなくなる。心苦しいが従来通り断るしかない」。大阪市内のスーパー銭湯は、施設内の至るところに「タトゥーお断り」を告げる案内を掲示する。

 厳しく禁止する理由は“線引き”の難しさにある。外国人のタトゥーを認めると、暴力団関係者の入場を防ぐためのルールが曖昧になるからだ。同銭湯の支配人は「『外国人ならいいのか』と因縁を付けられるのが目に見える。騒動になると、一般客が逃げてしまう」と頭を悩ます。

 一方、約500軒が加盟する大阪府公衆浴場組合は一定の理解を示し、「日本の銭湯文化を(外国人に)アピールするチャンスだ」と積極的な受け入れ姿勢を見せる。老舗浴場「昭和湯」(大阪市東淀川区)の店主、森川正さん(72)は「タトゥーに差別的な意識はない。いろいろな人が湯に漬かるのが銭湯」と強調。外見にとらわれない“裸の付き合い”の魅力を説く。

■マナーで判断

 一方、外国人向けの観光案内所では、タトゥーをした旅行者から入浴に関する相談が増えている。

 「関西ツーリストインフォメーションセンター心斎橋」(同市中央区)を4月下旬に訪れた30代のイタリア人夫婦は、「肩から背中に掛けてタトゥーのある夫が入れる温泉はないか?」と尋ねてきた。だが、松本有美子係長(49)は「受け入れに前向きな公衆浴場を紹介するが、施設によって判断基準が違うため対応が難しい」ともどかしさを口にする。

 「入浴客に迷惑を掛けたくないし、自分も浴場の人に制限されたくない」。日本に住んで16年になる30代の米国人男性=同市内在住=は、脇腹と手首の2カ所に子どもの名前を彫っており、入浴施設を利用するときはタオルで隠すなど周囲に配慮しているという。

 米国人男性は「文化の違いを理解し合える雰囲気づくりが大切だ。タトゥーの有無ではなく、入浴マナーで判断して」と訴える。