大阪発 羅針盤

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「大阪ミカン」宇宙へ

2017年1月1日

知名度アップ 産地期待

大阪の温州ミカンを生産する藤原さん=岸和田市
国際宇宙ステーションのロボットアームにキャッチされた「こうのとり」6号機=昨年12月13日(JAXA/NASA提供)

 昨年12月の国際宇宙ステーションへの無人補給機「こうのとり」6号機のドッキングを通じ、大阪府の温州ミカンが宇宙に届いた。滞在中の飛行士に提供する生鮮7食品の一つとして宇宙航空研究開発機構(JAXA)が選んだためだ。ミカン産地と言えば愛媛県、和歌山県が有名だが、果たして大阪ミカンは消費者の目を引き付けるかどうか。大阪の産地関係者は知名度アップに期待するが、その分岐点はミカンの食文化復活にあるようだ。

■「まさか」

 生鮮食品の選定を巡って、JAXAは全国23都道府県の119食品を対象に生食が可能であり、常温で4週間以上保存できることなどを吟味した。決定した7食品は北海道のタマネギ、青森と茨城のリンゴ、愛媛のレモン、そして大阪、愛媛、佐賀のミカンだった。

 「まさか」−。大阪ミカン約50個をJAXAに送ったJAいずみの(岸和田市)の柑橘(かんきつ)生産出荷組合長、藤原俊信さん(69)は、選定結果を受けて「ミカンの大産地はいっぱいあるのに」と驚いたという。

 実際、栽培面積700ヘクタール台の大阪府内のミカンは、和歌山7280ヘクタール、愛媛6千ヘクタール、静岡5320ヘクタール、熊本4090ヘクタール、長崎3110ヘクタール、佐賀2410ヘクタールを大きく下回る。それにもかかわらず、大阪ミカンが選ばれた根拠は定かではないが、藤原さんによると、大阪(岸和田市産)の特徴は大産地のミカンに比べて酸味が多く、甘みとのバランスにある。

■栽培面積激減

 この味覚に加えて古い歴史も特徴だ。鎌倉時代末期に山直山滝(現在の岸和田市)を中心に栽培され、江戸時代の正徳年間(1711〜1715年)には近隣へ普及した。大正時代末期には和歌山に次いで全国2位の栽培面積を誇っていた。

 しかし、戦後は国の奨励品種として大増殖したために生産過剰によって価格は暴落し、さらに高度経済成長政策を背景にミカン園は宅地や工場に転換した。特に大阪の場合は「農業をしなくても商売はいっぱいある」(藤原さん)との都市事情もミカン栽培の放棄に拍車を掛け、1974年に2940ヘクタールだった栽培面積は2014年には734ヘクタールまで激減した。

■家族だんらん

 厳しい産地事情を抱えた大阪ミカンだが、JAいずみの販売課の双和功課長は「宇宙に行ったことが知れ渡り、宣伝になれば生産者の励みになる」と宇宙への“出荷”効果を期待。折しも環太平洋連携協定(TPP)の行方が注目されているだけに、地産地消を推進する大阪府の担当者も「大阪の特産品を見直すきっかけになれば」と話す。

 とはいえ、皮をむく手間などを背景にした消費者のミカン離れに対する危機感が生産現場にあるのも事実だ。「ミカン籠を置く家庭は現在少ない。これが復活すれば消費量も増す」と藤原さん、双和さんは家族だんらんのこたつにミカンがある情景に思いをはせた。

 正月の鏡餅にも欠かせないミカンは今が旬だが、2人の訴えは核家族化を背景に生活様式が変化する現代社会への問題提起とも言える。