金井啓子の現代進行形

エンマ大王はお見通し

2017年10月12日

 総選挙ファクトチェック開始

「ニュースのタネ」がファクトチェックの結果を示すために使うエンマ大王のイラスト

 8日に行われた党首討論会で、加計学園問題について日本記者クラブ企画委員から質問された際に、安倍首相は「国民はよくファクトチェックをしてほしい」と発言した。首相は朝日新聞を名指しし、衆参両院の閉会中審査に参考人として出席した加戸守行・前愛媛県知事の証言について「次の日には全く(報道)していない」と指摘したのだった。ちなみに、首相の今回の発言をめぐってさっそく“ファクトチェック”が行われ、朝日新聞は7月10日の閉会中審査翌日に加戸氏の発言を掲載していたことが、メディアで報じられた。

 22日投開票の総選挙に向け、候補者もその周辺もさまざまな発言を繰り広げている。その言説が事実に基づくかどうかを知ることは、有権者の投票行動に大きく影響する。フェイクニュースという言葉が頻繁に飛び交う今、首相も推奨するファクトチェック、つまり言説や情報の真偽を検証する活動は重要になっている。

 先月半ばの本コラムで、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)という団体に私も関わっていると書いた。これは、協力する団体や個人を募り、ガイドラインを示して、ファクトチェックの概念を広めていくことを目指す団体だ。FIJの初めての活動として、総選挙に関わる言説のファクトチェックのプロジェクトを始めた。

 プロジェクトには複数のメディアが参加し、今回の総選挙に関連して事実かどうか疑いのある言説・情報について、自らの責任でファクトチェックを行い、それぞれのサイトで記事を発表する。そのうち、FIJの評価委員がガイドラインに一定程度準拠していると判断すると、FIJのサイトにも掲載される仕組みとなっている。

 今回のプロジェクトには、BuzzFeed Japan(古田大輔編集長)、GoHoo(楊井人文編集長)、Japan In―depth(安倍宏行総編集責任、山口一臣・本プロジェクト編集長)、ニュースのタネ(立岩陽一郎編集長)、ポリタス(津田大介編集長)が今のところ参加することになっている。既に、安倍首相や小池百合子東京都知事、松井一郎大阪府知事の発言などを対象にファクトチェックを始めた団体もある。

 ファクトチェックが盛んな米国のワシントンポスト紙では、ファクトチェックの結果をウソつきの象徴とされるピノキオの顔で示す。最もウソの度合いが激しければ「4ピノキオ」となる。これにならったのが、大阪を拠点とするニュースのタネ。ウソつきの舌を抜くエンマ大王の顔を使うことになった。

 「真っ赤なウソ」の場合には4人のエンマ大王が並ぶ。ちなみにこのエンマ大王は、東京都内の中学校に通う女の子が描いた。ファクトチェックの知名度が増すと同時に、このエンマ大王の顔も知られてほしいものだ。

 (近畿大学総合社会学部教授)