金井啓子の現代進行形

午後8時の「当確」は必要か

2017年10月26日

選挙報道では検証の充実を

 新党立ち上げで混沌(こんとん)とした総選挙。終わってみると、希望や維新の失速、立憲民主の健闘は目につくものの、連立与党の強さを含め政界の構図は選挙前とほぼ何も変わっていない。この選挙はいったい何だったのだろうかと振り返っているところだ。

 ただ、結果が出る前は、もしかして大きな変化が起こるのかと思いつつ、テレビのスイッチをつけたのが22日の夜8時だった。気になる選挙がある日にはそうするのが、私の長年の習慣になっている。選挙特番を見る時もあれば、通常の番組の画面上に流れるニュース速報を見る場合もある。

 22日も午後8時にテレビをつけると、NHKに加え、ボクシング中継の1局を除いて民放各局も選挙特番を始めていた。従来型の選挙特番からいち早く抜け出したテレビ東京系列は、今回も池上彰さんを迎えて独特の分析や情報を展開していた。また、他局も2匹目のドジョウを狙ってか、従来とは違った色合いを見せようと工夫している跡が随所に見られた。

 でも、しばらく番組を見るうちにふと思った。投票結果は一晩寝ればほとんど判明する。たった数時間後に公表されることになぜこんなに大騒ぎするのか。選挙、それも総選挙は大きなイベントには違いないし、誰しも早く結果が知りたいだろう。それが候補者や熱心な支援者であればなおさらだ。

 それでも、午後8時になったとたんに結果を知らせるための労力や経費を考えると、そこまでしなければならないことなのかと思えてくる。ご存じのように、各報道機関は期日前投票の会場や選挙当日の投票所の外で「出口調査」を全国各地で行う。各社のスタッフだけでなく、多くのアルバイトも臨時に雇って、投票を終えたばかりの人たちに投票先を尋ね、その他の取材も加味して予想を立てるのだ。それが、「開票率0%」なのに「当選確実」を報じる「ゼロ打ち」につながる。

 こういった、一定の時がたてば公式発表される情報の取材を懸命に行うよりも、もっと有権者に必要とされる報道がありそうだ。選挙期間中になると妙に腰が引け、全候補者を“バランスよく”報じることを意識しすぎる状況が広がる。それよりも、候補者の実績を見直し公約の実現可能性を検証すること、そして時には候補者の発言の真偽を検証することに時間とお金を注ぎ込んだ方が、特に今回のようなさまざまな要因が入り乱れている選挙では、よほど有権者としてはありがたい。「今までやってきたから」「他社がみんなやっているから」という呪縛から報道機関が抜け出せる日を期待したい。

 (近畿大学総合社会学部教授)