金井啓子の現代進行形

関心高まるファクトチェック

2018年11月1日

真実が通る健全社会の実現を

 「ファクトチェックという言葉が、1年前に比べるといろいろな人に使われるようになってきた」−。これは、ファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)の理事で事務局長の楊井人文氏の言葉だ。9月の沖縄県知事選挙に関するファクトチェックのプロジェクトを行ったFIJが、その成果と今後の展望に関するセミナーを数日前に開いた場でこの発言が出た。

 同じく理事としてFIJに関わる私も、同じ感触を抱いている。フェイクニュースという言葉は知っていても、情報や言説の信ぴょう性を確認する「ファクトチェック」という言葉には首をかしげる人が多かった昨年に比べ、人々の反応が変わってきた。

 ファクトチェックの進展に関して、米仏や韓国をはじめとする各国と比べて出遅れていた日本。手前みそになるが、FIJはそんなこの国で先頭に立ってきたと言って差し支えないと思う。

 昨秋の総選挙では、FIJは日本初となるファクトチェックのプロジェクトを行い、四つのウェブメディアが参加した。政治家やコメンテーターの発言、新聞の社説、ネットで話題になったうわさなどについて真偽を検証し、ファクトチェック記事をFIJのウェブサイトで紹介した。

 FIJの2回目のプロジェクトとなった今回の沖縄県知事選ファクトチェックには、早稲田大学の学生が参加するウェブマガジンや琉球新報も加わった。FIJサイトで紹介したファクトチェック記事も昨年のプロジェクトより増えた。取材・調査・記事化の助言・支援、記事のチェック・校正推敲(すいこう)、広報活動の支援をするサポートメンバーも集まった。

 先日のセミナーでは、楊井事務局長や琉球新報の滝本匠東京支社報道部長の講演に続き、パネルディスカッションではその2人にBuzzFeed Japanの瀬谷健介記者とFIJの立岩陽一郎副理事長も加わった。日本テレビ系『news zero』のキャスターを務める有働由美子氏も聴衆として質問をしてくれた会場には、報道機関を中心とする50人ほどが集まった。「ファクトチェック記事の企画を雑誌の編集部に出したのにボツになった」と残念そうに語った雑誌記者もいたが、ファクトチェックが広がる潮流が強まっていることは感じられた。

 ただ、残念なこともあった。FIJでは初めてクラウドファンディングを行ったのだが、最終的に目標額には届かなかったのである。それでも、ファクトチェックに意義を感じて貴重なお金を寄せてくれた人々の気持ちはありがたい。この活動はお金をかけてでもやるべき価値がある活動だということを、今後さらに伝えていきたいと気持ちを新たにしているところだ。なぜなら、ファクトチェックすべき対象は次から次へと現れるからである。私たちの仕事が“開店休業”になる社会を一日も早く目指したいものだ。

 (近畿大学総合社会学部教授)



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