居場所をつくろう 共生の現場から

第5部 動物(下) 高齢飼い主を支える

2017年9月29日

散歩代行や同居ホーム

施設内のペットルームで遊ぶ「しーちゃん」。その様子に自然と好川さんにも笑顔が浮かぶ=大阪市東淀川区

 平日の午後4時。携帯電話のコールとともにトイプードルの「なっちゃん」(雌10歳)は、廊下を駆け出した。ペットシッターの土田陽一さん(25)が玄関ドアを開けると、勢いよく足に飛びついた。「本当に尻尾がちぎれそう」。飼い主の女性(64)=大阪市都島区=はほほ笑んだ。

■うちの“子”

 女性は昨年2月から週3回程度、土田さんの「都島ナース」(大阪市都島区)になっちゃんの散歩を依頼している。きっかけは左膝の痛みだった。

 以前は毎日2時間の散歩が日課。しかし、膝の痛みに散歩もままならない。不安そうに見つめるなっちゃんに心も痛んだ。「散歩が本当に好きな“子”だから、喜ぶ姿を見るのが一番うれしい。家では何でも“なっちゃん優先”なの」

 都島ナースは訪問介護事業も行っているが、介護保険適用外のペットの世話を頼まれることも少なくない。また、多数の猫に家が占拠されている状態や、犬の世話が負担になっている家族もいたことから昨年、ペット事業を始めた。

 「ペットは物を言わない人間という感覚で接してほしい。親が犬猫を飼っているならば、子どもはその後のことを覚悟しないといけない」と土田さん。

■愛犬と最期まで

 少子高齢化の中、飼い主の高齢化も着実に進む。ペットフード協会(東京都)の全国犬猫飼育実態調査(2016年)によると、犬の飼育者は50代が最も高く、50〜70代で4割を超える。

 大阪市東淀川区にある住宅型有料老人ホーム「れんげハイツ井高野」は、全国でも珍しい犬猫と暮らせる施設として昨年12月にオープンした。

 施設にはペットルーム、ドッグランを完備。餌と水やり、トイレ交換、散歩代行のほか、月に1度は専属トリマーがシャンプーを施す充実ぶり。

 「以前からペット同伴で入居したい相談を受けていた。断った後がどうなったか心配だった」と曽谷志郎施設長。現在、ペット同居は全77室中5部屋限定だが、入居希望の問い合わせは後を絶たず、拡大する予定だ。

 ことし3月にシーズーの「しーちゃん」(雌2歳)と入居した好川富子さん(80)。同市内に住む娘(40)は、持病で犬の世話は難しい。「私が楽しそうにしているので、娘が一番喜んでいます」と笑顔を見せる。

 施設では、不定期でペットセラピーを実施。曽谷施設長は「生き物との触れ合いが、認知症の進行を緩和させるという研究もある。ペットは飼い主も周囲の人も明るい気持ちにさせ、施設が良い雰囲気になる」とメリットを口にする。

 好川さんの願いは「しーちゃんと一緒に、一日でも長く生きたい」ことだ。

ミニクリップ
 全国犬猫飼育実態調査 一般社団法人ペットフード協会(東京都)がまとめた2016年の推計飼育頭数では、犬が987万8千匹、猫は984万7千匹(外猫は含まず)だった。猫は横ばいだが、犬は減少傾向にある。同協会は飼育実態調査をインターネットで毎年実施している。