澪標 ―みおつくし―

挑戦するということ

佐田 幸宏
デザインエッグ株式会社代表取締役CEO   
2017年1月30日

 プログラムも書けないのに「ITで起業して生きていく!」なんていう人がいたらあなたはどう言うでしょう? 「やめておきなさい」というのが普通の考えだと思います。多くの人はあなたの意見を聞き、冷静になって起業をやめるでしょう。ただ、人にはどうしてもチャレンジしたいと思う瞬間があります。夢や理想を持ちながら今とのギャップに苦しみ、現在の人生の延長線上ではたどり着けないところに行きたい時、人はチャレンジするか、諦めるかの選択を迫られるのではないでしょうか?

 多くの人は小さな挑戦を繰り返しながら成長します。例えば高校や大学を選ぶ時。たくさん勉強して、今までの自分を超えていき、精いっぱい背伸びをしながら、限界にチャレンジする。こういった積み重ねをしてきた方には多くの選択肢があると考えます。

 しかし、私はそうではありませんでした。スポーツも勉強もそれほどできるわけではありません。しかも、サボっているわけではないため、単純に能力によるものだと思っていました。同じ時間勉強しても、友人のほうが良い点数を取るのです。大学では情報系の学科に在籍していましたが、4年間いてもプログラムを使って何かを作るということはできませんでした。

 そんな私が「ITで起業する!」なんて不可能に近い挑戦です。しかし、本当にやりたいことがみつかったとき、悔いのない生き方をするためには、挑戦する必要がありました。大学を卒業して会社員になった13カ月後のことです。会社員を辞めてからは1日18時間、手探りながらも寝食を忘れてプログラムを書きました。そこまでやっても最初の3年間、売り上げはほぼゼロでした。私が今も起業家として生き残っているのは能力によるものではなく、ただ粘り強く諦めず挑戦を続けたからだと思います。

 人は挑戦したいものができた時、常に選択を迫られます。起業するという選択をすることは、同時に気のいい同僚と一緒に仕事をするという未来を捨てることにもなります。また、安定した収入がなくなるため、結婚なども難しくなります。周りの多くの人が“普通”にしていることを捨てることになるのです。人はすべてのものを手に入れることはなかなかできません。一つを得るために多くを犠牲にすることもあります。しかも、犠牲にしたからといって、手に入るわけでもないのです。一つを望んだばっかりに、全てを失うこともあります。

 7年前、すべてを失う事を覚悟して起業という挑戦をしました。起業する時に思い描いたような理想にはまだまだ遠いのですが、挑戦を続けるなかでとても大きなものを得ることができました。同じく挑戦を続けているすてきな人たちと友人になれたことで「挑戦をする」というステージが上がったことです。これからも、さらに大きな挑戦にチャレンジをし続けていきます。

 (さだ・ゆきひろ、大阪府東大阪市)