澪標 ―みおつくし―

歯科定期健診のすゝめ

岩住 征紀
歯科医
2017年4月14日

 毎年、年に一度の楽しみの一つに、高校時代所属していたアメリカンフットボール部の同期会があります。会うと「あの試合でタッチダウンとったランニングバックは誰だった?」「あそこでパスが通っていれば試合の流れが変わったはず…」など思い出話に花が咲き、話題が尽きることはありません。

 そんなうたげのなか、卒業して26年たち、よわい40を過ぎると「健康のためにジョギングを始めたので禁煙した」「血糖値が高いので食前に薬を飲むようになった」「痛風になってからビールを控えている」など、「健康や病気」の話題が増えてくるのも興味深いところです。

 さて、もう4年前になるのですが「プレジデント」という雑誌に「シニア1000人調査『リタイア前にやるべきだった…』後悔トップ20」という企画で記事が掲載されました。「体を鍛えればよかった」「日頃からよく歩けばよかった」という2位、3位を抑えての1位がなんと、「歯の定期健診を受けとけばよかった」というものでした。

 この結果から推測できるのは「食べることが楽しみなのに、入れ歯の不具合や歯周病で不自由を感じている」方や、「長期間にわたる歯科治療を経験した(あるいは今治療中である)」方が多いことと、医科の健診は定期的に受けている(「定期的な健康診断を受けとけばよかった」は16位)が、歯科はなおざりになっている人が多いという事でしょう。

 歯科治療が長期にわたる事が多い理由の一つには、虫歯になったエナメル質・象牙質・歯の神経には自然治癒力が期待できない−今話題の『再生機能』がない−事にあります。ですから治療は原則的に原因除去です。そして原因除去後は、再発防止のための人工材料での置き換えです。その人工材料が「歯」、または「歯の根」の形に正確・精密に「詰める」または「被(かぶ)せる」ための作業・作成工程に時間を要するのです。しかし、初期の虫歯なら1度で完了できますし、進行した虫歯であっても近年の材料・技術の進歩により、治療回数は以前と比較して少なく済ますことができるようになってきました。

 定期的な歯科健診・受診のメリットは、歯石・歯垢除去や歯面清掃することで歯周病の改善・悪化予防と、虫歯の早期発見により少ない回数・狭い範囲で治療完了できることです。私の診療所でも定期健診により状況が好転した患者さんがいます。

 40代の働き盛りの男性で、食生活がどうしても不規則で、日々忙しいこともあり来院時には多数進行した虫歯があり、痛み・口臭を伴っていました。半年ほどかけて一通り治療を終えて、3か月後の定期健診を勧めましたが、1年半ほどしてまた以前と同じような状態での来院・治療でした。

 そんな状況に患者さんも「これはよくない」と自覚したのでしょう。治療終了後3カ月ごとの定期健診をすることで、この3年は虫歯の治療は1本だけでした。もちろん口臭は無く、歯茎の状態も健康です。今では、3カ月ごとに来院し、帰り際には次の予約をして帰られています。

 この定期受診で得られたことは患者さんの健康、歯科に対する意識の向上はもちろんですが、それとトータルでの治療費用が抑えられている事です。超高齢社会に入り、国民医療費の増大抑制が喫緊の問題となった今では、定期健診は社会の要求に応えられることだと考えています。

 (いわずみ・ゆきのり、大阪府吹田市)



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