澪標 ―みおつくし―

脱・多数決のススメ 〜民主的に生きる人を育むために〜

藤田 美保
認定NPO法人 箕面こどもの森学園校長
2018年8月10日

 物事を決めるとき、皆さんはどのような方法をとられますか?多くの話し合いの場では、多数決が使われることがほとんどだと思います。もしかしたら多数決も取らず、声が大きい人が決めたことに従うということがまかり通っている場合もあるかもしれません。

 「多数決=民主主義」だと言う人もいますが、本当は民主主義ってもっと違うものだと思います。自分の主張と相手の主張が違ったとき、心がざわざわします。そんなとき、私たちは「自分が正しくて相手が間違っている」と思ってしまいがちになります。でも、そうではなくて、「そんなこともあるかもね」と思える力、「あーでもない、こーでもない」と意見をすり合わせていくことが対話であり、そうやって形成される社会が民主的な社会ではないでしょうか。

 市民社会が成熟している国オランダには、「浮揚面」という言葉があるそうです。意見が対立したとき、お互いの気持ちや考えや立場などを述べ合った後で、「じゃあ、ここからどうするのか?」。それぞれの主張に固執するのではなく、共に歩みより、第3の案を模索し続けていった先に、まるで浮かび上がってくる面のように浮上してくる案のことを指します。オランダの失業率がすごく高かったとき、雇用主側、従業員側、行政側の3者の利害が対立していたのですが、お互いが歩み寄り、対話によりこの浮揚面を見いだすことで状況を回復していったことがあるという話を聞いたことがあります。

 箕面こどもの森学園でも、物事を決めるときに多数決は使いません。どうしたらいいのか、だれもが納得できる方法を見いだすために、いろんな案を出し合って、その案の中から賛成が多い案ではなく、だれも反対しなかった案を選んでいます。例え少数側であっても、自分の意見を聴いてもらえる経験を積み重ねることで、子どもたちは、尊重されることの大切さを体験から学び、意見の違う人のことを尊重できるようになっていきます。

 例えば、高学年クラスの修学旅行の行き先も、子どもたちが話し合って決めています。すんなり行き先が決まる年もあれば、なかなか決まらない年もあります。ある年は、白浜と京都で意見が対立。かなり長い時間をかけて話し合った末、「修学旅行の行き先は白浜にするけど、京都にはみんなで日帰り旅行に行く」ということで落ち着いたこともありました。

 箕面こどもの森学園の好きなところを子どもたちにたずねると、「多数決で決めないところ」と返ってくることがよくあります。多数決で決めないと話し合いに時間がかかってしまいますが、たとえ時間がかかっても、物事を決定していく過程の中で、自分の意見をとことんまで尊重してもらえる環境を、子どもたちは居心地がいいと感じているようです。

 脱・多数決のススメ。学校現場だけでなく、さまざまな職場やご家庭など、いろんな場所でご活用いただければと思います。ぜひチャレンジしてみてください。

 (ふじた・みほ、大阪府箕面市)